研究課題
環境保護や地域間を移動可能な生産要素への課税のように、他国に外部効果を及ぼす政策については、国家間協調を実行することが難しいことが知られている。たとえ事前に国家間で協調を約束したとしても、事後に協調体制から離脱し、利己的な政策を実施することが、それぞれの国にとって最適な行動となる。平成23年度は、事前の協力への合意と事後の実行との間の時間的不整合性の問題を分析するために、国際協力への外交努力を市民が評価できる選挙過程を組み入れたシグナリング・モデルを構築した。そのうえで、多くの国際協約が設置している資金メカニズムが、コミットメント・ディバイスとしての機能を果たしていることを示した。平成24年度は、論文"Financial Mechanism and Enforceability of International Environmental Agreements"を査読付き学術雑誌Environmental and Resource Economicsに発表した。また論文を完成させるまでの過程で、いくつかの学会、研究機関で報告を行った。国内の選挙過程と国際協調の成功との関連性を考察した理論分析は、これまであまり蓄積されていない。政治経済学的アプローチを取り入れ、協力解の履行という、経済学的に重要な問題の解決の可能性を示す結果を得たことは、意義のあることと考える。平成25年度は資産分布、資本の生産性、人口規模などの点における地域間の非対称性を導入した。中でも、資本の生産性の高い国が高税率を好む政治家を選出することで、租税輸出効果が強まり、資本の生産性の低い国で低税率を好む資本家が選出され、低税率で資本を呼び込む現象が観察されることを説明できる結果を得た。このような分析の拡張は、政治的要因が地域間協調の試みに及ぼす影響を予測するうえで重要な示唆を与えるものと考える。
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三田学会雑誌
巻: 106巻 ページ: 5-21
http://web.econ.keio.ac.jp/org/kes/ja/pub/
Economics of Governance
巻: vol. 14, no. 3 ページ: 205-232
10.1007/s10101-013-0127-0