研究課題/領域番号 |
23530384
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / コーポレート・ファイナンス / 労使関係 / 雇用 |
研究概要 |
本研究の目的は、企業の業績が変化した時の従業員の処遇、株主に対する還元がどのように変化するかを実証的に検証することである。さらに、近年のコーポレート・ガバナンスの変化によって、これらの行動が変化しているかどうかを検証する。本年度は実証分析を行う為の基礎的なデータセットの整備を行った。具体的には東京証券取引所一部上場企業のうち、1988年から2011年まで継続的にデータを観察できる企業を対象にデータを収集した。これらの企業について、財務データ、所有構造に関するデータおよび雇用に関するデータを収集し、データセットを構築、整備している。結果として約500社のデータを得ることができた。データは日経NEEDS-FAMEおよび日本政策投資銀行の財務データを中心に収集している。 データセットの整備と並行して、コーポレート・ガバナンスを取り巻くさまざまな変化について文献研究を行った。制度的な変化としては、金融商品取引法や会社法の導入に代表される資本市場における変化を指摘することができる。これらの制度変化は、企業が合併や買収などの組織再編性を行いやすくするためのものであると考えることができる。このため、こういった制度変化によって従業員の交渉力が弱まる可能性がある。さらに、日本でもいわゆる投資ファンドの活動が活発になっている。投資ファンドについては、十分な情報を収集することは容易ではないが、これらの動きについても文献研究をおこなった。これらの結果はOxford大学出版会より出版された本の一章であるKubo (2014)としてまとめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はデータセットの整備を目的としていたが、これに関してはある程度進展していると考えることができる。今後、このデータセットを修正、拡充することで分析を進めていくことができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、整備したデータセットを元に実証分析を行う予定である。まず、基礎統計量を確認することで、過去20年間にわたる日本企業の行動の変化を理解することができると期待できる。さらに計量経済学的な分析を進める。具体的には、雇用調整の決定要因を分析する。また、早期退職の募集など大規模な雇用調整を被説明変数としてロジット回帰分析などの手法を用いる。さらに、配当などの株主還元を被説明変数とする推計を行う。これらの推計を行う際にはコーポレート・ガバナンスを説明変数として加えた分析をおこなう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は実証分析であり、複数のデータソースからデータを収集しデータセットを作成している。研究補助者を依頼し、紙媒体からデータを作成する一方で、電子的なデータベースを購入し必要な変数を作成することも行う。研究補助者の必要作業量について、予測していた時間と実際に必要であった時間が異なっていたことから次年度使用額が生じた。 本研究では、電子化されていないデータを収集し、データセットを構築する。このデータの整備のための研究補助者が必要である。さらに外部から電子的なデータベースの購入を行う予定である。
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