平成25年度は、23~24年度の研究成果である、景気循環性(シクリカリティ)が企業の信用力変化に与える影響を計量モデル分析した論文を、国際会議(フランス、The 3rd International Conference of the Financial Engineering and Banking Society)で発表した。 また、24年度から取り込んできた、マクロ経済変数をストレス負荷時の企業の信用力に与える影響を評価する手法の開発を行った。従来、企業の信用力・企業価値を評価する際、ミクロとしての個社の財務力を、主に財務指標で評価する方法が採られているため、マクロ経済変数や業種変数の影響を考慮した評価方法の開発が必要とされた。この方法は、信用リスクのストレステストにおいて、マクロ経済変数のストレスシナリオを、テストに参加する金融機関が自身の信用リスク計量モデルで使用するリスクパラメーターに変換するための汎用的なモデルアプローチである。このアプローチでは、説明変数として、「個社の財務変数」の他に「マクロ経済変数」および「業種変数」を確率変数として考慮し、データとして、「個社の財務指標」「マクロ経済指標」を使用するものである。マクロおよびミクロの情報を正確に企業の信用力に取り込むために、多重積分を含む尤度関数を最尤推定する手法を開発した。なお、本研究成果は、FSAリサーチ・レビュー第8号に採録された。 3年間の研究期間を通じて、景気循環性を含むマクロの景気変動がミクロレベルの企業与信に与える影響を信用リスク評価の観点から計量分析し、査読論文を2報執筆した。
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