研究課題/領域番号 |
23530389
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
八塩 裕之 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (30460661)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 税制 / 社会保障 / 所得再分配 |
研究概要 |
平成23年度の具体的な研究成果は二点であるが、いずれも今回のプロジェクトであげた2つの研究テーマ(「税制の所得再分配の実態」と「地方財政」)のうちの1つめ「税制の所得再分配の実態」に関するものである。これらを順番に説明する。 研究成果の一点目は雑誌『会計検査研究』第45号に論文「公的年金の「物価スライド」と消費税」を公刊した。論文では次年度以降の準備として、近年重要な問題となっている消費増税と公的年金の物価スライド(物価上昇を給付に反映させること)による給付上乗せが所得再分配にもたらす帰結について検討した。消費増税による物価上昇を公的年金給付の物価スライドに反映させた場合、それが所得再分配の点で大きな問題をもたらすこと(その恩恵が年金受給者の富裕者にとくに大きく及ぶこと)を理論・データの両面で示した。高齢化が進んだ社会においては、年金による世代間の所得再分配ではなく、所得税などによる同世代間の再分配がより重要となることを論じ、税制の所得再分配強化の必要性を論じた。 一方、二点目の研究成果は、公益社団法人日本租税研究協会の研究会において、「今後の税制のあり方について(所得税・消費税を中心に)」と題する講演(研究発表)を行ったことである。その概要は雑誌『租税研究』749号に掲載された。講演では震災復興財源問題や「社会保障と税の一体改革」の問題とともに、日本の所得税の所得再分配効果がなぜ弱いかについて検討を行った。すなわち、日本の所得税の最高税率は比較的高いにもかかわらず、その再分配効果が弱いことが知られているが、その理由として所得税の課税ベースの侵食をあげ、他国の所得税制度の実態などと比較しつつ、議論を行った。今回の研究発表では具体的なデータを用いて再分配効果の実態を分析したわけではないが、次年度以降の実態分析に対する準備的な考察と位置付けることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究では、「日本の税制の所得再分配の実態」と「地方財政」について研究を進めることになっているが、当初の研究計画では平成23年度を準備期間と位置付けていた。その中で、「税制の所得再分配」については、次年度以降のデータ分析に備えて、諸外国との制度比較などを通じて検討を進めることとなっていたが、「研究業績」で述べたように、その検討結果の一部は『租税研究』で公開された。また、次年度以降の研究に極めて関連の強い研究である論文を公刊できた(『会計検査研究』)。このように、一応の研究成果がでたことであり、研究は「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記に述べた2つの研究テーマ「税制の所得再分配の実態」「地方財政」について、それぞれ研究を進める予定である。「税制の再分配」については上記に述べたように、平成23年度に制度分析などの基礎的な研究を行ったが、今年度(平成24年度)以降データ分析に着手し、日本の税制の再分配の実態などを明らかにする予定である。日本の所得税は最高税率が比較的高い一方で、所得再分配効果が極めて弱いとされる。そうした実態を分析したうえで、税制改革の方向性を検討していく予定である。 また、2つめの研究テーマである「地方財政」については、地方税、とくに個人住民税の実態にとくに注目して分析を進める予定である。個人住民税の課税ベース侵食が地方財政にどのような影響を及ぼすか、さらにその侵食が進む実態とそれによって生じる税収ロスなどについて、分析を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費については、(研究を推進する中で若干変更する可能性はあるものの)概ね、平成23年5月に申請した申請書の計画に従って支出を行う予定である。ただし、平成23年度に4万円繰り越しを行っており、それについては研究に必要な出張費(旅費)として使用する予定である。平成24年度の研究費の使用計画(繰り越しの4万円を含む)は以下のとおりである。 物品費75000円 旅費390000円 その他75000円
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