研究課題/領域番号 |
23530394
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
小川 禎友 近畿大学, 経済学部, 教授 (30330228)
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研究分担者 |
堀井 亮 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90324855)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 最適課税論 / 家族 / 成長 / 開放経済 |
研究概要 |
本研究テーマ、家族形成行動と最適所得税構造を分析する上で、モデルの根幹となる効用関数の構築を行った。各家計の効用レベルは、子供の人数と子供の成長具合に依存する。従来の効用関数をそのまま使用すれば、効用が子供の人数に関して増加関数になり、所得が増加すれば、それに応じて子供の人数が非現実な数まで増えていく可能性がある。しかし、効用を子供の人数だけでなく、子供の成長具合の関数とすれば、子供の人数は所得が増えても現実的な数で止まる。このモデルを用いれば、所得税における世帯間の負担を決定する課税単位問題(個人単位課税や世帯単位課税)の分析が可能になる。また、世帯単位課税の中でも、2分2乗制度とn分n乗制度間の厚生比較が可能になるだろう。本研究の目的の1つである開放経済への拡張分析を行った(Optimum Taxation in an Open Economy、JPET12 TAIPEI にアクセプト済み、報告予定)。本研究では所得税を導入する前段階の分析として、物品税と関税の分析を行った。しかし、ニュメレール財を余暇(=時間保有量-労働)と解釈しても、結果に大きな差はない。内容と結論は以下のとおりである。国際価格を所与とする小国と交易条件を改善できる大国のそれぞれで最適課税構造を調査した。主な結論として、(1)小国と大国で最適課税公式が全く同じものになる。つまり定性的な結論にまったく違いはない。(2)最適課税構造は、補償需要弾力性だけでなく、供給の弾力性にも依存する。(3)関税は需要側に価格の歪みを与えるにも関わらず、最適関税構造は供給の弾力性だけに依存する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族形成活動を含む最適所得税問題を分析するモデルを構築した。家計の人数を一定として扱う従来の最適所得税問題と異なり、本研究では家族形成活動を取り入れるので、各家計の人数が内生的に決定されるモデルを構築する必要があった。効用関数の構築が最も重要で、それが本研究の成果に直結するものである。「研究実績の概要」でも示した通り、効用を子供の人数と子供の成長具合の関数とすることで、現実的な家族形成行動を扱うモデルを構築できた。 また、開放経済における最適課税問題を扱う論文が完成した。この論文はJPET12 TAIPEIで報告予定である。
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今後の研究の推進方策 |
家計形成行動を内生化したモデルを用いて、最適な所得税制を設計する。まずベンチーマークとして線形所得税のケースを考える。次に非線形所得税のケースを考え、線形所得税の結論と比較する。但し、非線形の場合、税スケジュールは各個人が自らの能力を偽るような行動をしても得をしないという制約を考慮する必要がある。解析的に分析が困難であれば、場合によってシミュレーション分析を行う。また、開放経済、成長モデルなどへの拡張分析も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用計画は以下のとおりである。前年度からの繰り越し分は、英語添削代として約200000円。平成24年度分は以下の通りである。研究打ち合わせのため(近畿大学―東北大学間)約200000円。学会等報告、参加のため約500000円。書籍・雑誌購入のため約100000円。ノートパソコン購入のため約300000円。文具、トナー、パソコン関連消耗品に約100000円。人件費・謝礼金として約200000円。
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