研究代表者である小川は、本研究の目的の1つである開放経済への課税分析を行った。夫婦間での財の取引を国際貿易に解釈することにより、財が完全競争的に供給されることが認められ、比較的容易に分析することができた。この研究では4つケースを考えた:①小国で原産地原則が適用されている、②大国で原産地原則が適用されている、③小国で仕向地原則が適用されている、④大国で仕向地原則が適用されている。主な結論として、(i)小国、大国、仕向地原則、原産地原則に関係なく、すべてのケースで、最適物品税の公式が同じになり、そこから得られる税率決定ルールなどもすべて同じになる。(ii)最適関税構造は4つのケースそれぞれで全く異なる構造を持つことが明らかになった。 また、マクロ動学分析を担当する堀井は、家族形成行動、特に結婚や出産のタイミングがマクロ経済の動きや、社会厚生に与える影響を分析した。現在日本では晩婚化が進んでいるが、それに伴って子供を持つタイミングも生涯の中で遅くなってきている。晩婚化は、結果的に(意図せざる)非婚化の可能性も高めるため、人口成長率を直接下げる可能があるが、仮にある世代の女性の結婚・出産の数が変わらなかったとしても、出産のタイミングが変化すると、毎年の人口動態の動きは影響を受ける(テンポエフェクト)。とくに、晩婚化が急激に進行すると、一時的な”Baby bust” (Baby boomの逆)が発生し、それが非常に長期間にわたって世代人員構成に波を発生させることがわかった。さらに、それにより将来各世代の厚生が(自らが団塊世代に属するか・少子世代に属するかにより)非対称的な影響受けることが明らかになった。
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