研究課題/領域番号 |
23530401
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
早坂 啓造 岩手大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (60003985)
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研究分担者 |
三浦 黎明 岩手県立大学, 総合政策学部, 名誉教授 (70070191)
横山 英信 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (70240223)
松岡 勝実 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (80254803)
比屋根 哲 岩手大学, (連合)農学研究科, 教授 (90218743)
山本 信次 岩手大学, 農学部, 准教授 (80292176)
岡 惠介 東北文化学園大学, 総合政策学部, 教授 (90301697)
泉 桂子 都留文科大学, 文学部, 准教授 (10457898)
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キーワード | 入会・コモンズ / アーカイブ / カリキュラム編成実施 / 社会的提言 / 国際発信 |
研究概要 |
本助成事業計画の骨子に従って報告する。 1. 岩手入会アーカイブの構築。国立公文書館つくば分館と岩手県庁文書庫からの資料調査と蒐集を継続し、予算上もかなり集中支出して、成果を挙げた。判決原本1210コマ(前年とからの累積2766コマ)、岩手明治林政史資料全18巻5825コマをデジタル蒐集した。その他資料を含むアーカイブの基本台帳も、整備を進めた。 2. それら資料に基づく個別のケーススタディも少しずつではあるが積み上げられている。また、2013年度に山梨で開催される第14回国際コモンズ学会への参加を視野に、オストローム、マッキーンの諸論著の研究会も数回行われた。隔月の研究会では引き続きメンバーによる研究報告が為された。 3. 「農山漁村の閉塞状況打破の方向づけと社会的提言」。これは未集約だが、震災・津波からの復興も絡め個別の取り組みも行われており、次年度以降に成果が期待される。 4. 教育面への活用。これは、今年度の共同取り組みのハイライトであった。岩手大学での「一年次自由ゼミ: 人と自然との関わりを問い直す-入会とコモンズ」はほぼ全メンバーによる講義と複数教員の参加の方式で実施され、少人数ながら意識の高い参加学生からの質問・討論で、熱気のある充実したものとなった。また、野外実習として、九戸村財産区の現地訪問見学、自治会幹部との話し合いなど、学生・教員両者にとって得難い体験となった。毎回および全体について提出された学生の感想・アンケートからも、知識としての授業以上の新しい体験や楽しさを味わえたことが読みとれる。さらに再検討して、次年度以降の実施方式を含め、練り直す予定である。 5. 国際発信・交流。次年度の国際コモンズ学会に対応して、研究成果を国内外に発信し、国際交流を進めるために、岩手での企画を協議し、様々な準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記計画骨子に対応してみると、1.「アーカイブ構築」に関しては、国立公文書館、県庁文書庫からの蒐集が予期以上に進捗し、内容の充実が図れたこと、4.「教育面への活用」が計画より1年繰り上げて実現出来たこと、2.「個別のケーススタディー」が進み、それらを発表し検討し合う隔月の研究会もほぼ順調に進行していること、から、「計画以上」と評価できる。また、5.「国際的発信・交流」については、当初計画では正面切って謳わなかったが、国際コモンズ学会の計画具体化に刺戟され、その参加メンバーの岩手への招聘・交流の企画が予期以上に充実したものとなりそうなことも大いにメンバーの関心を高め、その受入準備を兼ねた研究会も、科研費メンバー外の研究者を含め、積み重ねられていることも、積極的評価の要素となった。 3.の「農山漁村の将来への社会的提言」については、困難な課題だけに、未だ十分な方向性を見出すにはいたっていないが、最終年次までに、計画骨子の諸点を更に追究する中で、何とか集大成を図れればと考えている。 予算使用については、予期せぬ資料事情の出現で、蒐集のための重点使用を図ったこともあり、大幅な変更を余儀なくされたが、それは成果を挙げるための必要かつ成功裡の措置であったと判断している。教育面への活用については、予算使用を余り伴わず、各メンバーの積極的準備と参加に支えられて画期的ともいえる成果を挙げることが出来たと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、計画第3年次(2013年度)には当初計画にはなかった国際的発信・交流の機会を最重点項目として取り組むことにし、メンバー間の合議に基づき予算と労力を大幅に傾斜配分する。 第4・5年次(2014-2015年度)には、それらの成果を集約することを加味した全体の研究成果の集大成を進める予定である。具体的には、1.アーカイブの設置場所について岩手大学との協議を決着させ、蒐集成果を基本台帳(目録)として刊行する、2.ケーススタディーを集大成した刊行物を企画し、その実現を図る。3.「社会的提言」の企画、編集、刊行を進める、4.第4・5年次の授業実践をも踏まえたテキスト編集と刊行を目指す、5.2013年度の国際交流成果の集約と編集・刊行をめざす、というやや欲張った計画を進める積もりである。 しかし、1の資料蒐集は、本助成事業計画で完結する見透しは全くなく、成果集約のための諸刊行計画を果たすための予算も不足が予測される。従って、本事業の継続の可否についてもメンバー間で検討する必要が生ずるものと考えられる。 こうした問題を孕みつつも、第4・5年次には、第3年次の計画変更と傾斜を正常に戻し、当初計画の遂行と完成に向かうつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、6月の第14回国際コモンズ学会山中湖大会の参加者の中から、6月8-10日、希望者をフィールドトリップとして受け入れ、沿岸被災地訪問と懇談、アーカイブ展示会見学、小岩井農場(元入会地)見学、さらに11-12日は、小繋訪問と併せて、同大会共同議長マッキーン教授(デューク大学、日本入会およびコモンズ論研究者)を招聘して講演会と学術セミナーを開催することとした。これは、本研究事業計画の趣旨と一致するだけでなく、国際発信と交流のまたとない機会を有効に活用したいという本研究メンバーの合意に基づくものである。沿岸訪問は、被災の実態に触れるだけでなく、漁業入会権に歴史的淵源を持つ漁業組合と、生活協同組合が、復興に際し強い連携の下に、着々と成果を挙げつつある実践を紹介し、研究メンバー自身も課題意識を深めようとするものである。アーカイブ展は、これ迄の蒐集資料とそれに基づく多くのケーススタディーの成果を示して、地域アーカイブとしての存在意義を国際的に発信するとともに、それについての率直な国際的評価を得ようとするものである。マッキーン教授の講演は、氏の日本入会研究の経緯と成果について話を聞き、市民・学生の入会・コモンズ問題についての関心を高めると共に、本研究メンバーを中心とする研究者とセミナーを開催し、入会コモンズ研究の諸問題を話し合い、震災・津波復興や、農山漁村の閉塞状況打開の方向についても率直に意見を交換しようとするものである。 こうした企画のため、当初の第3年次計画を変更し、1.のアーカイブ資料蒐集を休止して、そのための予算を上記企画に集中させることにした。2.3.5.の骨子は、上記企画の一環に組み込み、4.は第4.5年次に備え、検討期間とする事にした。 同時に、この企画の記録集成にも配慮する。また、本研究事業計画の一貫性を損なうことのないよう、慎重に実施するつもりである。
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