研究課題/領域番号 |
23530402
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塩谷 昌史 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (70312684)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ロシア経済史 / 蒸気機関 / ユーラシア / 流通ネットワーク / 更紗 / アジア商人 / 商業圏 / 化学 |
研究概要 |
本年は、8月から9月にかけてロシアの繊維産業の中心地である、イヴァノヴォを訪れ、この地域の約140年にわたる統計資料を収集した。その際に、イヴァノヴォ国立大学や繊維企業を訪ね、聞き取り調査を実施した。他方、大阪市立大学の『経済学雑誌』に共著論文を一つ、政治経済学・経済史学会の学術誌『歴史と経済』に単著論文を一つ発表した。特に、後者の論文は、本研究課題と密接な関係にある。また、経営史学会の学術雑誌『経営史学』に論文を投稿し、審査結果を待っている。 本研究の課題の前段階にある、19世紀前半においてロシア綿工業が発展するが、その発展の主たる要因は、捺染業の発展と蒸気機関の導入にあった。従来、綿工業の発展は機械化による生産力の強化によるものと考えられたが、19世紀前半に刊行された『ウラジーミル県新聞』を検討した結果、従来の説明は間違いではないけれども、より正確には、更紗に対する消費者需要が生産綿の改善を促し、捺染工程において、西ヨーロッパの化学と蒸気機関が導入されたことが決定的に重要であった。その後、蒸気機関は、捺染工程→紡績工程→織布工程に導入され、綿織物生産が大幅に増加する。 綿工業の発展を社会的な観点から見れば、工業化と共に学校制度が整備され始める。工場で働く労働者にとって、識字能力は必須となる。工場経営者は、自身の工場に勤務する従業員の識字能力を高めるため、工場の傍に企業内学校を併設する。また、捺染業において化学の知識が必要不可欠になり、捺染工向けに講習会が開かれる。蒸気機関を動かすため、機械工が必要となるが、彼らを養成する専門学校も開設される。以上が本年度の実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来は、年度内に2度、ロシアに調査に行く計画だったが、東日本大震災の結果、4月‐6月には震災後の研究計画の復旧が急務であったため、結果的に、年度内に1度しかロシアで資料収集ができなかった。この遅れを取り戻すべく、今年はできれば年度内に3回ロシアに調査に訪れたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、7月に1回、11月に1回、2月に1回、ロシアのサンクト・ペテルブルクにある、ロシア国立図書館で、19世紀後半に刊行された新聞・雑誌を集中的に閲覧したいと考えている。また、これまでの研究成果をロシア語論文にし、ロシア科学アカデミーが刊行する『経済史年報』に投稿する。年度の上半期に、早稲田大学の研究会で、研究課題の経過報告を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に研究費の大部分は、ロシアに出張するための出張費と、資料のコピー代に費やす予定である。残りの費用は、外国語文献の購入に充てる。
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