研究課題/領域番号 |
23530402
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塩谷 昌史 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (70312684)
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キーワード | ロシア / 経済史 / 工業化 / 商業ネットワーク / 綿工業 / アジア商人 / 自然と人間 / モノ研究 |
研究概要 |
2012年6月に早稲田大学ロシア研究所で、「ロシア更紗とアジア商人-近代の始まり-」というタイトルで、研究成果を報告した。2012年12月にロシアのカザン国立大学でロシアの外国貿易に果たしたタタール商人の役割について、資料収集を行った。また、カザンの歴史研究所のサリホフ副所長に面会し、カザンとブハラの歴史的関係を伺った。彼の説明によれば、カザンとブハラは同一の世界に併存し、両都市間での宗教関係者や商人の連携は、極めて密であることがわかった。この点は、通常のロシア人歴史研究者が軽視する領域であるが、ロシアと中央アジア間の流通ネットワークを研究する際には、避けて通れない領域であることを認識した。 同月に、サンクト・ペテルブルクの国立図書館で、19世紀後半の「商業新聞」と「ウラジーミル県新聞」を閲覧し、鉄道や蒸気船がロシアに導入された後に、ロシア製綿織物の流通がどのように変容したかを確認し、それと関連する様々な資料収集を行った。 2013年3月下旬に京都大学のINDAS主催で行われた国際ワークショップ「Variety of Commodity in History: Social Dynamism, Networks and Colonialism」に招待され、科学研究費の研究経過も含め、「The Export of Russian cotton goods to Asian markets in the first half of 19th century」というタイトルで報告を行った。このワークショップは、インド研究者が中心となっていたが、様々な領域の研究者が集い、有意義な意見交換ができた。 2012年度を通じて、モノグラフ「ロシア綿業発展の契機-ロシア更紗とアジア商人」を書き上げ、脱稿した。このモノグラフは、2013年9月末に、知泉書館から出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2012年度は、モノグラフ「ロシア綿業発展の契機-ロシア更紗とアジア商人-」の執筆を重視したため、外国出張を通常より減らしたため、本来2012年度に2回ロシアに出張し、資料収集を行う予定であったが、2012年12月に1回の資料収集で終わったため、当初の研究計画から、やや遅れてしまった。しかし、来年度中には、ロシアに3度出張し、遅れた資料収集の作業を挽回する予定である。 研究計画からやや遅れているものの、国内で2回の研究報告を行い、「経営史学」に論文を発表し、モノグラフを完成させたことから、ある程度の研究成果を収められたと自負している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の遅れを取り戻すべく、2013年度には、3度、ロシアに出張し、ペテルブルクのロシア国立図書館で新聞の閲覧に努めたい。対象となる新聞は、「ウラジーミル県新聞」、「国際商業新聞」、「トルキスタン新聞」である。時期としては、8月、12月、3月を予定している。これまでの研究を基に、「経済学雑誌」(大阪市立大学経済学部)と「経営史学」に論文を投稿する予定である。また、2012年3月の国際ワークショップの報告原稿を英文の論文にまとめると同時に、モノグラフの要旨を英文の論文にまとめ、Slavic Reviewに投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初予定していた、2週間ペテルブルクに滞在し、「金融・工業・貿易通報」の閲覧を、次年度に延期することにより生じたものであり、延期したペテルブルクに滞在し、雑誌を閲覧するために必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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