研究課題/領域番号 |
23530410
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石山 幸彦 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (90251735)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エネルギー産業 / 国有化 / フランス石炭公社 / エネルギー政策 / ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体 / ヨーロッパ統合 |
研究概要 |
平成23年度は戦後のフランスにおけるエネルギー政策と石炭産業の国有化についての研究を中心に実施した。特に、1847年から実施された石炭産業の国有化について、その実施方法や国有化後の1947年から1950年代前半までのフランス石炭公社の経営状況を分析することができた。 以上の作業に必要な文書資料の収集・調査のために、8月にフランス・パリに出かけ、パリ国立文書館やフランス国立図書館などで、フランス政府・計画庁関係文書、産業省文書やフランス石炭公社関係文書などを閲覧、収集した。さらに、パリではエコール・ポィテクニーク教授のエリック・ゴドリエ(Eric Godelier)氏と面会し、現在のフランスにおける関連文書の整理・公開状況などについて、貴重な情報を得た。さらに、本研究を進めうえで必要となるフランスにおける関連テーマの最新の研究状況についても情報を得て、今後の研究方針に気丈な助言を得た。 以上の成果として、平成23年度には、以下の点を明らかにすることができた。国有化された石炭産業は、パリのフランス石炭公社(Charbonnages de France)と各地域に存在する9つの炭鉱会社によって構成されていた。そのうちフランス石炭公社は実際の石炭採掘を行うことはなく、9つの炭鉱会社を統括する管理組織であった。そこでは同公社は各炭鉱会社の資金調達や財務面を管理し、炭鉱会社は石炭の採掘と販売を担っていた。こうした枠割分担がなされたいたが、国有化後時間の経過とともに公社の炭鉱会社への管理は実質的に強化され、ひいては公社を介した政府・産業省の石炭産業管理が確立されたのである。 また、戦後の混乱が収束し、石炭生産が拡大されると、石炭各社の財務状況は改善されていくが、設備投資資金は政府からの補助金に依存せざるを得なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は戦後のフランスにおけるエネルギー政策と石炭産業の国有化についての研究を中心に実施した。特に、1847年から実施された石炭産業の国有化について、その実施方法や国有化後の1947年から1950年代前半までのフランス石炭公社の経営状況を分析することができた。 これらの成果は、3年間に計画された本研究全体の前半部分をなすものである。今後、1950年代末から始まるエネルギー転換とエネルギー政策の変化、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体によるの対応などを分析することを考慮すれば、本研究はおおむねね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、前年度までの成果を踏まえて、夏季休業期間中などにフランスを訪れ、パリ国立文書館、フォンテンブロー現代史文書館またはフランス北部のルーべに存在する労働の世界文書館などに所蔵されているフランス政府・産業省文書、計画庁文書、フランス石炭公社文書などを閲覧し、必要な資料を収集し、分析する。こうした作業を通して以下の点を解明する。 まず第1に、1950年代末から1960年代に石油消費が拡大し、石炭とのエネルギー転換が進行する状況下で、フランス政府はどのようなエネルギー政策を作用したのか、なかでも石炭産業や炭鉱労働者の保護はいかに行われたのかを検討する。第2に同様の状況下で、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体は、加盟国政府の政策に対してどのように対応したのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、夏季休業期間中などに2~3週間フランスを訪れ、資料調査・収集を実施するので、そのための旅費を研究費から支出する計画である。また、フランスをはじめヨーロッパ諸国のエネルギー政策、石炭産業、さらにはヨーロッパ統合に関連する図書を購入するために研究費を使用する。
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