研究課題/領域番号 |
23530410
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
石山 幸彦 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (90251735)
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キーワード | エネルギー産業 / 国有化 / フランス石炭公社 / エネルギー政策 / ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体 / ヨーロッパ統合 |
研究概要 |
昨年までにフランスにおいて収集したフランス政府、計画庁文書、産業省文書、フランス石炭公社文書などの分析作業を進めた。その結果、昨年度までの分析と合わせて、フランスの石炭産業は終戦直後の混乱期、1960年代の石油利用の増加による石炭需要の低落期、オイルショック以降の産業危機と3つの時期に経営危機を迎えていたことが明らかにすることができた。 まず、オイルショック以降の産業危機においては、石炭、鉄鋼業などの経営危機に際して、フランス政府と共同体が協力して対応し、従来の国家権力を共同体が一定程度担い始めたことを明らかにした。この成果を平成24年6月30日の政治経済学・経済史学会、春季総合研究会において「産業危機とヨーロッパ統合」と題して発表した。 さらに、1960年以降の石炭産業の衰退とそれへの対応について、フランス政府やヨーロッパ石炭鉄鋼共同体の対策を検討した。この時期にはフランス政府が中心となって生産縮小や人員整理に対応し、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体は補助的役割しか果たさなかったことを明らかにした。その成果は、昨年度の成果である終戦直後の国有化や経済計画によって石炭産業が再建されことと合わせて、平成25年1月26日の政治経済学・経済史学会のヨーロッパ統合史フォーラムにおいて報告した。 その後、上記2度の学会報告の成果をまとめ、オイルショック以降の経済停滞がそれ以前よりはるかに深刻であり、フランス政府が共同体に一定程度依存せざるを得なくなったことを明らかにして、「産業危機とヨーロッパ統合ーフランス政府の危機対応戦略」を矢後和彦編『システム機器の歴史的位相』蒼天社出版に掲載する作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度までで、終戦直後の危機の時代、1960年代の石炭の斜陽化、オイルショック以後の産業危機など、1980年代までの戦後フランスにおけるエネルギー政策の変遷をヨーロッパ統合の進展と関連づけて解明した。その成果を学会等で報告し、平成25年4月には書籍(共著)の刊行も予定している。 以上のように、成果の報告も順調に進んでおり、本研究は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、実施してきた戦後から1980年代までにおけるフランスとヨーロッパ共同体のエネルギー政策の変遷に関する研究を発展させる。具体的には、これまでの成果をもとに、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体結成時から1960年代にかけてのフランス政府、フランス石炭公社、同共同体の政策選択、政策調整の過程をより詳細に分析する。 そのためには、これまで収集したフランス政府、フランス石炭公社、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体・最高機関の内部文書の分析を進める。必要があれば、夏季休業期間などを利用して、フランスなどにフランス政府、フランス石炭公社などの内部文書の収集に出かける。 さらに、最終年度の平成25年度には、その成果発表の準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年には、必要な図書資料の購入を中心に研究費を支出する。必要な場合には、夏季休業期間などを利用して、フランスなどの文書館や図書館においてフランス政府やフランス石炭公社関係の文書資料を収集に出かける。そのための旅費も支出することを計画する。 なお平成24年度に1600円の使用残額を残しているが、今年度中に上記の計画のなかで支出する。
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