研究課題/領域番号 |
23530412
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤井 実 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90162536)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 科学技術動員 / 陸海軍研究機関 / 軍民転換 / 対日占領政策 / 産業技術政策 |
研究概要 |
今年度はまず戦時期の科学技術動員、戦中・戦後の科学技術者養成、科学技術者の軍民転換・「外地」からの引き揚げ等について検討を進めた。とくに日本技術士会の初期のメンバーの一部が、陸海軍の「高級技術者」あるいは「外地」からの引き揚げ技術者であることが明らかとなった。また引き揚げてきた技術者の受け皿となる企業が設立され、これらの企業が日本における先駆的なコンサルタント企業に成長したことも明らかとなった。さらにこうしたコンサルタント企業が日本の東南アジア諸国に対する賠償プロジェクトを担うようになり、その意味で戦前・戦時中のアジアへの展開が、戦後に別の形で継承されていった点も検討することができた。 科学技術者の軍民転換の具体的事例として、国有鉄道に関する研究を進めた。鉄道技術研究所が陸海軍技術者の受け皿となったことは以前から指摘されてきたが、職員名簿、鉄道技術研究所の年報類を使用することによって、軍民転換の実態を数量的に把握することが可能となった。陸海軍から移動してきた技術者が鉄道技術研究所における研究を主導した事例だけでなく、戦時中に「武官」であったために公職追放の対象となった技術者は研究所や大学からいったん追放された後、再度新たな就職先を求めて困難な道のりを歩む必要があったことも明らかとなった。 アメリカの対日科学術政策を考える上で前提となる、占領初期のコンプトン調査に代表される、アメリカによる日本の科学技術の実情に対する調査についても検討した。戦時中の科学技術動員を主導した人物に対する尋問記録等を通して、日本側資料では分からない動員された科学技術者の実態にも迫ることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)戦時期の科学技術動員、(2)アメリカの対日科学技術政策、(3)戦後復興期の産業技術政策、(4)戦後復興期の産官学連携、(5)主要企業における共同研究の実態の解明の5点を、大きな研究課題としている。第1、第2の研究課題に関しては、具体的な分析を進めることができた。 第3~第5についても資料収集はほぼ順調に進んでおり、次年度は具体的な分析作業に入ることができるものと考える。とくに戦後復興期の産業技術政策に関しては、工業技術庁、工業技術院に関する資料を広範囲に収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はとくに戦後復興期の産業技術政策、産官学連携の実態、主要企業での共同研究について、関連資料を収集しつつ、具体的な分析を進める。 工業技術庁、工業技術院、日本開発銀行等による産業技術政策の立案、実施過程、その影響について検討する。また科学技術行政協議会や産業技術審議会の活動が産業技術開発のあり方にどのような影響を与えたかも検討する。 民間企業における社内研究の独自の意義について検討し、同時に各企業はいかなる観点から共同研究や技術導入を選択していたのかを考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は物品費に50万円、旅費に60万円、人件費・謝金に10万円、その他に10万円を使用することを考えている。物品費は産業技術政策関連図書資料の購入に当てられ、旅費は主として東京に所在する文書館、図書館等への出張に使用される。人件費・謝金は収集した資料のデータ入力に当てられ、その他の経費は主として資料複写費に使用される。
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