本研究では、戦前期の三菱商事(商事)を主な対象に、取引関係の視点から総合商社の機能を検討した。主な分析結果としては第1に、商事は、外国企業との提携の仲介や市場開拓のサポートという機能を発揮した。この点との関連で、商事が取引先の業績、技術力、製品の評判等を詳しく調査していた点に注目した。総合商社は取引先の情報を積極的に収集し、意思決定に利用していたのである。第2に、商事は、出張と常駐という形で複数の社員と経営幹部を取引先に派遣してた。こうした行為は経営資源の供給と経営監視の強化という2つの機能を併せ持つ。加えて、商事は取引先の再建計画の策定と実施に際して、積極的に関与していたのである。
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