研究課題/領域番号 |
23530418
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (00192675)
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キーワード | 移民 / 第2次世界大戦後イギリス / 多民族社会 / 若年者失業 / 人的訓練 / 国際情報交換(イギリス) |
研究概要 |
24年度の前半は、研究実施計画にも示したように1983年に実施された『労働力調査(Labour Force Survey, 1983;のデータを利用して、1980年代前半のイギリスにおける、義務教育修了直後から24歳までの、移民およびその子ども世代の社会経済状況の把握を行った。詳細は、研究業績の論文に示したが、概要は以下のとおりである。 第1の成果は、本研究では、アメリカの移民研究者の研究を援用して、移民第1.5世代を想定していたことである。本研究では中等教育開始以前(満10歳)までに移住してきた「子ども移民」を移民第1.5世代とした。予備的な調査で、移民第1.5世代は、11歳以降に移民してきた移民第1世代よりも、イギリスで生まれた移民第2世代により社会経済的特質が近い。移民の世代分けについての本格てき研究はこれからであるが一定の方向性を見出すことができた。 本研究では「移民」を旧英連邦諸国からの「カラード」移民、すなわちマイノリティ移民のみ限らず、アイルランド出身者、ヨーロッパ諸国出身者に拡大したことである。こうした「ホワイト」移民やその子孫の若者の社会経済状況を分析すると、アイルラン系はイギリス人よりもやや教育程度が低く、社会的状況も不利である。ヨーロッパ系はイギリス人よりも教育熱心であり、社会経済状況もよい。 一方、マイノリティ移民については、アフロカリビアン系を例外として教育機関に長く留まる傾向があるものの、アフリカ系を例外として、必ずしも全体の教育資格水準をあげているわけではないことを示した。この点が、1990年代移行の研究の成果とは異なる。 24年度後半は、25年6月に予定している報告の準備および、その資料収集と整理にあてた。25年2月には、予定通り、イギリスにおいて第2回目の資料収集を行い多くの貴重な資料を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、24年度末までに本研究にかんする、先行研究の収集・分析、第1次資料の収集を行うここととなっていた。23年度末に、Labour Force Survey, 1983のデータを発見、その分析を選考させたために、先行研究の分析の文章化は、24年度中にはできず、25年度に行うこととなった。それ以外は、計画通り研究は進み、第1次資料の収集は、イギリスの図書館の都合によって閲覧できなかった、ごく一部の資料を除いて、おおむね完了した。 一方、成果の公表については、当初予定していなかったが、25年6月に大韓民国で開催される韓日ブリテン史会議の共通テーマが「20世紀ブリテンにおける多文化主義と人種問題」となり、ここで報告を行うことが決まったことは、計画段階では予想できなかったが、研究上の大きな進展であった。 以上から、本研究の現在までの達成度は、若干の計画変更などがあったものの「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、本研究の最終年度であるので、これまでの研究のまとめと、成果の発信を中心に行う。成果の発信としては、6月の第5回韓日ブリテン史会議(釜山・新羅大学)において、"Foreign workers or Minority Youth ―― Employment Policies of the British Government in the late 1970s and the early 1980s"と題して報告をする。さらに、この報告をもとに『東アジアブリテン史雑誌(The East Asian Journal of British History)』に投稿を予定している。 本研究計画最終年度のまとめとしては、上記の報告および論文をもとに、日本語投稿論文および、著書の準備を行う(日本語投稿論文は26年中の掲載、著書は26年末の完成を目指す)。 本年度の研究計画は以下の通りである。 ~6月 韓日ブリテン史会議での報告準備および報告(国外旅費・消耗品費) 7月~11月 『東アジアブリテン史雑誌』への投稿準備(備品費・消耗品費・謝金) 11月 ~ 日本投稿論文および著書準備・26年3月ごろ、資料の最終確認にイギリスに1週間程度出張(消耗品費・国外旅費)
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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