研究課題/領域番号 |
23530423
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西村 卓 同志社大学, 経済学部, 教授 (70156107)
|
研究分担者 |
奥田 以在 同志社大学, 経済学部, 助教 (60609551)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 京都 / 近代 / 町内会 / コミュニティ / 自治 / 都市 / 年中行事 / インフラ |
研究概要 |
平成23年度は、研究計画の予定通り22年度に調査に取りかかった、京都市中京区烏丸通蛸薬師下ル手洗水町を対象として研究を進めた。特に、京都府立総合資料館所蔵の『館古559 手洗水町文書』のうち、「町内記録」(No.78)の翻刻作業が重要である。 この「町内記録」は、明治44(1911)年の御手洗井の神事の記録から記載が始まっている。この年は、京都市のインフラ整備事業であった「京都市三大事業」のうち、道路拡築事業(道路拡幅および電気軌道の敷設)によって手洗水町の中央を走る烏丸通が3倍に拡幅された年であった。これにともなう用地買収によって手洗水町の住民構造は激変し、都市内交通の発展にともない同町は急激に通勤型の金融街へと変貌していくこととなった。我々が翻刻した「町内記録」は、このような激動の時期に、手洗水町の伝統的な「町」自治がどのように変化し、どのように適応したのかを知る手がかりとなる史料なのである。 「町内記録」には、昭和15(1940)年、京都市内で戦時町内会体制が整えられていく中、手洗水町と笋町の合併に関する協議の顛末が記されている。道路拡築事業によって戸数が少なくなった手洗水町は、単体として煎じ町内会を構成することはなく、隣町であった笋町と合併することになった。その際に、手洗水町の象徴的な神事である御手洗井の神事と共有財産については「従来之通リニなし併合せず」と申し合わされているのである。「町」は、その名前を失おうとするときでさえ、「町」のシンボル的な存在であった神事と共有財産を守ろうとし、それは他町によっても容認されたのである。「町」にとって神事とは、それほど重大な意味を持っていることが推察されるのである。 次年度以降は、「町」というコミュニティと神事の関係について調査・研究を進めていくが、今年度の研究成果を十分に踏まえて、研究を進めて参りたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手洗水町の分析に時間がかかったこともあり、手洗水町と別に研究対象とする真町については、資料を調達する段階に留まっているため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、「町」における神事の役割ということをテーマとしながら、真町、雁金町、和久屋町を中心とした分析を進めていくと共に、新資料の発掘作業にも着手したいと考えている。前記3ヶ町の資料については、京都府立総合資料館が所蔵しているため、資料を複写して分析に用いる。また、京都市歴史資料館の所蔵する山鉾町の史料も利用する予定である。25年度は、24年度までに収集し、分析を始めている問題について研究発表する予定である。その際、追加的に必要となる史料などは適宜複写して用いる予定である。また、そのために他都市(海外も含む)へ調査に赴くこともあり得る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、上記のような研究計画のため、京都府立総合資料館および京都市歴史資料館が所蔵する資料の複写代金が大きな位置を占める。なお、京都府立総合資料館では、マイクロ撮影済みのものが1枚=60円、未撮影のものは1枚=100円である。また、それらのデータ整理に必要なパソコンおよびデータのバックアップ機材を購入する予定である。さらに、調査撮影用の機材(デジタルカメラ、照明等)を購入する可能性がある。その他、調査旅費(海外渡航費を含む)が必要となる可能性がある。
|