研究課題/領域番号 |
23530428
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
沼上 幹 一橋大学, 商学研究科, 教授 (80208280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 経営組織 / 経営戦略 / 多角化 / 組織設計 |
研究概要 |
平成23年度は日本における実証系組織論研究の研究動向を歴史的に振り返り,そこにおいて組織構造概念が徐々に消失していったことを学説の整理を通じて明らかにしてきた.1970年代と80年代初頭に日本における組織論の実証研究を支配してきたコンティンジェンシー理論に基づく研究は,どちらかというと組織構造と環境と成果をそのまま結びつけたモデル化を行なっていた.これに対して,1980年代の初めころから台頭してきた研究は,組織構造概念を重視することなく,むしろ組織プロセス(行為と相互行為)に注目して,そのダイナミックな側面を強調してきた.その考え方に基づくならば,組織構造は組織プロセスを規定しつくすことができず,逆に組織プロセスによって組織構造が創発している,という点が強調されることになる.このような組織プロセス重視の研究が活発化することで,組織構造に注目した組織の質問票調査等の計量的な研究は徐々に弱まり,組織の行為主体に注目してインタビュー調査を行ない,そのケースを記述するというタイプの研究が主流になってきた.このような研究では,その研究方法の特徴も手伝って,組織構造に関する変数が取り上げられる可能性が低下し,組織内におけるイノベーションのイニシアティブなどがとりわけ注目され,そのイニシアティブのケース・ヒストリーを描くことで組織の構造ではなく,プロセスが丁寧に記述されるというスタイルが取られるようになっていった.このような研究動向によって,若干の例外はあるものの,組織構造の研究,とりわけ多角化した大規模企業の事業部間の関係づけなどの研究は非常に手薄になってきた.以上のようなことを過去の研究成果のレビューを通じて整理したのが今年度の研究実績の主たるポイントである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は企業を対象としたインタビューを当初想定していたが,対象とするべきエレクトロニクス系の大規模企業が極度の業績悪化に見舞われ,インタビュー調査に対応できる状況でなくなった.そのため,当初予定していた企業を対象としたインタビュー調査が主体ではないものの,先行研究の整理を中心として研究活動は順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は,現在までに行なってきた先行研究のレビューを今後も継続しながら,同時に企業へのインタビュー調査も積み重ねていく予定である. 組織構造と組織設計の研究領域では,Strategic Management Journalの最新の特集号(Strategy and the Design of Organizational Architecture)にも見られるように,戦略と密接に結びついた組織アーキテクチャーあるいは組織構造の基本設計への注目が集まってきている.それ故,過去の文献のみではなく,近年の組織アーキテクチャーの最新の研究業績をレビューする作業が非常に重要である.この点で,特にアメリカ経営学会における世界の組織論研究者との議論が非常に重要な作業の1つとなる. これらの理論研究と並行して,日本における大規模な多角化企業の事業部間の調整のやり方など,実証的な研究をインタビュー調査によって明らかにしていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度もアメリカ経営学会で組織デザインに関する研究成果を報告し,その成果を巡って世界の研究者たちと議論をすることが非常に重要な作業となる.特に,インタビュー調査と文献調査のデータベース化を進める必要があるため,パーソナル・コンピュータとソフトウェアを購入するために予算が使用されることになる.
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