研究課題/領域番号 |
23530428
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
沼上 幹 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80208280)
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キーワード | 多角化企業 / 組織設計 / シナジー / 大規模企業 |
研究概要 |
平成24年度は、全社組織設計に関連する最も重要な概念である「シナジー」に関して、経営戦略論の視点から概念的な整理を行ない、全社組織設計の基盤を構築した。とりわけ注目したのは、イゴール・アンソフのシナジー概念とその後のリソース・ベースト・ビュー(Resource-based View: RBV)、ポジショニング・ビュー(Positioning View)のシナジー概念がそれぞれどのように異なるのかを明確化した。その結果、アンソフのような戦略計画策定の際に重要な概念としてシナジーに注目した研究者も、またポーターのように競争の場面で競争優位の源泉としてシナジーに注目した研究者も、共に具体性の高いレベルでシナジー効果を捉えていたのに対して、RBVでは抽象度を上げたレベルでそれを捉えており、両者の間には同じ概念とは呼べないほどの異なる捉えられ方がされていたことが明らかにされた。また、ポーターのポジショニング・ビューが進展していくにつれ、事業間のシナジーという概念が消失し、特定市場に向けた活動間のシナジーは強調されても、市場分野を超えたシナジーは強調されなくなっていったことが明らかにされた。 これらの戦略論におけるシナジー概念の相違は、そのまま全社の事業部間の関係をどのように設計するのかという示唆を与える。とくに、事業部間の具体性の高いレベルでのシナジーを強調せず、抽象度の高いシナジーを強調するという経営の方法は、実はポジショニング・ビューとRBVを抽象度のレベルを違えることで共存させることになることなどが明らかになる。このように考えると、全社の組織設計を考える上では、資源間・活動観の関連を具体的に考える局面での組織設計と、抽象的に考える局面での組織設計という2重の組織設計に注意を払う必要がある。つまり、組織設計は単一の原理だけでなく、複数原理を重層的に適用して行なうものなのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は既存の組織設計の主要概念の1つを深く分析し、その結果を論考として公表した。この概念整理によって、今後の全社組織設計の問題を思考していく基盤が整理されたという点で研究は着実に進展している。 また予定されていた組織設計に関するインタビュー調査も、ほぼ1ヶ月に1社の割合でトップ経営者を対象に進められている。ただし、エレクトロニクス系企業の業績は不調のため、他の業界の組織について積極的に調査を進めている。この調査結果を基にした実証的な研究成果のとりまとめは、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、全社組織を設計する上で重要な先行研究の概念については、適宜、レビューを行ない、深い分析を加えた上で整理していく作業は継続していく。今後は、組織メンバーの間のコミュニケーションの難しい情報のやりとりに関する研究や、組織間のIT技術による情報処理の問題など、新しい時代の情報処理パラダイムの議論を検討する必要があると考えている。 また、今後の研究に際しては、インタビュー対象企業として、単品の小規模企業を比較対象として取り上げる必要があると考えている。 これまでの研究成果を基礎に置いた上で、平成25年度はこれまでと同様に、まず文献の広範なレビューを行なっていく。とくに、シナジー効果を、市場を媒介にすると達成出来ないのか、それともオープン・イノベーションの議論のように、市場を介してもシナジー効果が達成出来るのか、というタイプの問題も考えて行く必要がある。とくに、取引企業間でIT技術を標準化していく場合などに、この問題は重要になる。これらの文献を整理し、その文献のレビュー結果をデータベース化していく作業が必要になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度から25年度に繰り越される額が,22,840円である.これは平成24年度に若干の消耗品購入額が残ったために生じたものであり,平成25年度に消耗品の費用として活用される.
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