研究課題/領域番号 |
23530428
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
沼上 幹 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80208280)
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キーワード | 組織 / 組織デザイン / 官僚制 / 機械的組織 / ルーチン / ヒエラルキー |
研究概要 |
平成25年度は,組織設計の基本骨格である官僚制組織あるいは機械的組織に関する最も基本的な要素について,多くの文献をレビューして既存の官僚制批判に対する半批判的なレビューを作成する作業を行なってきた.また同時に,業績を回復させてきた企業や好調な業績を維持している企業のトップマネジメントにインタビューを行なって,企業経営における全社的な組織の取り組みについて実証的な知見を蓄積してきた. 官僚制組織の基本要素は,ルーチンとヒエラルキーである.このルーチンについては,過去には組織の硬直性の源泉として議論されてきたが,近年の組織論研究ではむしろルーチン化によるイノベーションの促進や柔軟性の促進などが議論されてきた.このルーチンの柔軟性促進効果に関する研究は,既存の作業手順を明示化し,誰にでも分かるような形態にすることで,却って各人の修正提案が行なえる状況になることなどを指摘してきた.またもう一つの要素のヒエラルキーについては,近年,ルース・カップリングの理論に関する多くの批判が教育組織の領域でも語られるようになってきたことを確認し,ルースとタイトの両方のコントロールを備えたハイブリッド型の組織について検討を加えた.また,官僚制組織構造に関するメタ分析や管理者行動の研究などのレビューを通じて,実際には組織の動き方がそれほど大きく変化してきたわけではないことを確認した.これらを総合して考えると,官僚制機構の時代は終わり,ポスト官僚制の時代がやってくるという考え方は基本的には幻想であり,むしろ過剰になった官僚制をスリム化するという程度の変革が最も妥当な組織変革の方向であるという非常に地味な結論が得られることになる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レビューの部分が大きく進展している.インタビュー調査の部分は,コンスタントに行なわれており,企業経営と組織に関する知見が積み重ねられていると思われる.以上から,おおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,基本的なレビューと調査を同時並行的に進めていくが,平成26年度はこれまでの知見を多数の出版物としてまとめて発信していくことにエネルギーを費やしたいと考えている.
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