研究課題/領域番号 |
23530428
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
沼上 幹 一橋大学, 商学研究科, 教授 (80208280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 組織の重さ / 有機的組織 / 組織の柔軟性 / グローバル・ニッチ・トップ企業 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,組織に関して,2つの方向から研究を行なった. ひとつは,組織のもつ調整の難しさについて,その源泉がどこにあるのかを概念的に整理する研究である.とくに,日本企業の実務家や研究者の間に広く普及している「有機的組織は柔軟性が高い」という信念が,残念ながら真であるとはかぎらず,却って企業組織の運営を硬直化させる可能性があることを体系的に明らかにした.とくにルース・カップリングという考え方に対する批判や,ルーチンが実は柔軟性の源泉であるという議論,管理者行動の実証研究が明らかにした官僚制機構の永続性などをベースとして,官僚制機構が実は柔軟性の源泉であり,官僚制機構に対するアンチテーゼが多数提出されていながらも,実際には官僚制機構がその柔軟性故に現代でも存続し続けていることを明らかにした. もう一つの研究の方向は,組織の〈重さ〉を克服している小規模企業に関する研究である.大規模な多角化企業の組織について考察を進める本研究にとって,実は小規模・中規模企業の研究はその比較対象として非常に重要な意味をもつ.その意味で,グローバルな市場で高いシェアをもち,独特の競争を展開して高い経営成果を達成している小規模・中規模企業は重要な比較対象である.グローバル・ニッチ・トップ企業と呼ばれるそのような企業の特徴を明らかにして,大規模企業が失ってしまった独特の機動力・意思決定の速さが,どのようにしてこれらの企業の中に形成・維持されているのかを明らかにする研究を行なった.企業のオーナーシップや独自技術という基盤を持つことによる意思決定の単純化などが重要な要素として浮かび上がった. 以上が平成26年度の研究成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優良大規模企業のトップ・インタビューを毎月1回程度のペースで実施しており,そのインタビュー・データは徐々に蓄積されてきている.また概念的なフレームワーク自体も明確であり,研究成果が着実に積み上がってきている. たとえば,大規模企業の例としては,資生堂の社長へのインタビューを通じて,大規模企業が重さを克服するための手法として,特定のブランド・イメージの統一的な顧客への開示を基軸とするという方法が示唆された.また,中堅企業の特徴としては,再上場を果たしたすかいらーくの社長インタビューを通じて,トップ・マネジメントによる機動的な店舗展開とメニュー開発の指示が極めて重要であったことが明らかになった.さらに中規模企業の例として,三木プーリの会長インタビューを通じて,特定の技術へ拘りつつも,次々と新しい事業分野へと技術を応用していく小集団の自由度とトップのイニシアティブの両方の相互作用が重要であることが示唆されている. これらの知見をベースにして,これまでのフレームワークを修正・洗練し,次の研究活動につなげていくことができると考えられる.このような状況であるから,現在までの達成度は順調であると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,レビューとインタビューを中心として,大規模な多角化企業組織の問題を掘り下げて研究していく予定である.できるかぎり,論文作成に時間を割いて,研究の積み上げを行っていく予定である. とくに平成27年度も新しい会社の社長インタビューを行って,大規模多角化企業のもつ組織の重さを克服し,社内の諸活動のシナジー効果をもった展開を促進する多様な経営施策を収集し,その背後にある組織のロジックを探っていく予定である.おおよそ毎月1回,年間10回程度のトップ・マネジメント・インタビューを行い,この全社シナジーの問題を明らかにしていく. 同時に,中規模・中堅企業の研究も同時に進行する必要がある.なぜ中規模・中堅企業が市場取引で結びついたネットワークよりも,却って大規模企業の方がシナジーを失ってしまうことがあるのかという視点で大規模企業の分析を行わなければ,日本の大規模多角化企業が陥った問題を解明することができないと考えられるからである.このような大規模企業のトップ・インタビューと中小・中堅企業の自律性・迅速性・柔軟性のに関する質的調査を組み合わせながら,平成27年度もフレームワークの深化をはかっていくことにしたい.
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備考 |
一橋大学機関リポジトリ (http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/items-by-author?author=Numagami%2C+Tsuyoshi)
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