大規模多角化企業の組織設計フレームワークに関する調査研究を行ない、〈諸活動間の戦略的相互依存関係の定義〉を再現した組織設計という基本原理を明確化する作業を行なった。組織設計の基本的な原理として、近年は情報処理パラダイムに基づいたものが共有されている。すなわち、事前に確定している標準や計画に基づいて、その実行をするだけで所期の目的が達成できるのであれば、情報処理負荷が高くないが、不確実性が高く、事前に考えられていた状況と異なったことが生じる環境の下では、業務遂行中に例外を処理する必要が生まれ、その例外処理が情報処理負荷を発生させ、その情報処理負荷に対応できる組織設計が高い成果をもたらす、と言う考え方である。この情報処理パラダイム自体は現在でも十分に通用するものではあるのだが、同時に、その背後には諸活動の相互依存関係に関する議論が所与のものとして措定され、十分な考慮に対象になっていないという問題を抱えている。とくに競争優位性を求めて戦略を構想するという側面と、それを組織によって実現するという組織設計の側面が、経営上は極めて重要なペアであるにもかかわらず、これまではその部分の議論が組織設計論と体系的に結びつけられてこなかった。典型的には、戦略論で語られるシナジーの議論やセットとデバイスの関係の議論は、実はその重要な戦略的相互依存関係の示唆を通じて組織設計に重要な影響を及ぼすものである。セットとデバイスの関係が当初の素朴な生産的相互依存だった時代から、戦略な武器として捉えられる戦略的相互依存の段階へ変わり、さらにセットとデバイスとクラウドという3階層の戦略的相互依存関係の時代へと変遷していくにつれ、組織設計が大きく変わっていくことになるということを明らかにしている。その議論を取り込んだ「戦略的相互依存の組織設計論」とも呼ぶべきフレームワークの素地を未定稿ではあるが形成した。
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