本研究は,地方に本社を置く株式公開企業が上場に至る過程において,地方銀行がその企業に対してどのような役割を果たしているかを,企業の視点(資金調達,人材支援,情報提供など)から解明することを目的とした.そして,この研究では,企業が上場に至る成長段階に焦点を当てて,地方企業と地方銀行のメインバンク関係を明らかにしたいと考えた. 平成27年度は,データの収集と整備を進めながら,単著「地域活性化と地方からのIPO」と単著「三條機械のMBOとアクティビスト・ファンド」,単著「雪国まいたけのTOBとコーポレート・ガバナンス」の3本を発表した. 当初の補助事業期間である平成23年度から平成26年度までの4年間と期間延長の承認を得た平成27年度をあわせた5年間,株式市場は上昇し,新規株式公開(IPO)は増加した.しかし,本研究が対象とする地方に本社を置く企業のIPOは総じて少なく,サンプルの収集とサンプル・サイズの拡大が難しかった. そのような状況の中,本研究のまとめとして発表した単著「地域活性化と地方からのIPO」において,2008年から2014年までの7年間を分析対象期間とし,地方に本社を置く企業の新興株式市場におけるIPOについて報告した.具体的には,地方からのIPOはどのような企業なのか,どのような規模なのか,どのような株主構成なのか,そして地方からのIPO において地域金融機関はどのように関係しているのかに注目した.IPO総数は2009年から2014年まで連続して増加し,戦後7回目のIPOブーム,あるいはマザーズ開設後の第3 の波といわれたが,現在のところ,地方は,必ずしも,そのブームや波に乗っているとはいえないことを報告した.
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