本年度は研究計画に従い、昨年度にひきつづき、ソフトウェアのオフショア開発における異文化問題についての先行研究等を収集・整理・分析し、さらに、オフショア開発従事者による研究会へ参加して情報交換、事例研究企業や海外のオフショア開発にかかわる団体におけるヒアリング調査などを実施した。具体的には、日本オフショアビジネス協会が主催するワークショップを中心に国内外の企業・業界団体にヒアリングを行うとともに、オフショア開発拠点としてソフトウェアパーク整備を進める中国・大連地区、瀋陽地区、長春地区、吉林地区において、運営事業者と入居企業などのヒアリングを実施した。また、「チャイナプラスワン」のオフショア先として成長しているヴェトナムで開催されたICT Japan Dayに参加し、ハノイ、ホーチミンのオフショア受託企業にヒアリングを行った。さらに、釜山において開催されたIT EXPOのオフショアビジネスセミナーにおいて日韓のSWオフショアの可能性と戦略について報告をおこなった。 これらの調査から、1.コストベースのオフショア開発は韓国では優位性がないが特定分野では可能性がある、2.中国においてもコスト優位性は大連など沿海都市部から瀋陽、長春など内陸へとシフトする傾向がある、3.ヴェトナムはコスト優位性があるがコミュニケータなど異文化にともなう管理コストがかかる、等が明らかになった。大連地区は人件費など直接的なコストでは優位性を落としているものの、長年にわたり多くの日系企業が試行錯誤しながら様々なノウハウを移転してきた蓄積があり、総合的なコストではまだ一定の優位を持っていると思われる。また、アジャイルなど開発方法によってはブリッジSEなどを置かなくても成功している事例(ヴェトナム)もあり、コミュニケーションの必要性をコントロールすることで開発リスクを抑える可能性が確認された。
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