研究概要 |
基盤調査(C)課題番号2053022にて実施した、「経営者(および上級管理職)の育成経路とマネジメント能力の関係」に係る定量的調査を、東証一部上場企業社員に対象を拡大して実施(2012年度)。この調査に係るデータの分析、ならびに追加的なヒアリング調査実施による解釈を試みた。送付した質問票は8,335通で、回収された質問票の総数は410通(回収率4.91%)であった。データ分析から、回答者が形成しているマネジメント能力に3つの因子があることが判明。演繹的なアプローチを可能とする能力、帰納的なアプローチを可能とする能力、触媒的な役割を果たしうる能力の3つである。同時に、回答者の育成経路につき、実務経験に係る8因子が浮上。このうち、「若年期から経営陣との関係でレベルの高い仕事」、「独自の哲学・信念の形成」、「若年期から戦略的な視点と実践に触れる機会」、「過酷な仕事から自信」、「20代から専門性とアイデア要請」が演繹的なアプローチを可能とする能力の向上との結びつきが確認された。「モデルとなる社内人材の尊重」と「熱心に部下育成」が機能的なアプローチを可能とする能力の向上との結びつきが確認された。「独自の哲学・信念の形成」が触媒的な役割を果たしうる能力の形成と結びつくことも確認された。すなわち、マネジメント能力の種類とその深化の程度は、実務経験の種類と程度に影響を受けることがわかった。さらに、大学での過ごし方と社会に出てから形成されるマネジメント能力との関連が浮き彫りとなった。とくにゼミや勉学に没頭した程度の高い回答者は、大学時代に専門性を深化させ、社会に出てから演繹的なアプローチを可能とする能力を高める傾向があることがわかった。他方、サークルや部活に没頭した程度の高い回答者は、大学時代に対人能力を深化させ、社会に出てから帰納的なアプローチを可能とする能力を高める傾向が浮かび上がった。
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