研究課題/領域番号 |
23530439
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
てき 林よ 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (40236964)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 投機選好 / ディスポジション効果 |
研究概要 |
本研究課題の初年度に当たる本年度においては、まずは、先行研究、とくに投資家行動全般と商品先物投資家の投資行動に関する研究を丹念に整理し、比較と総括を行った。先行研究は、英文文献がメインだが、これらの文献からは、以下のことが再確認できた。第1、投資家とくに個人投資家は、あえてリスクの高い金融商品(先物など)に投資し、リスク愛好的性格が高い。第2、ゼロサムゲーム的な市場において、投資家の投機選好が極めて高い。この投機選好は、新古典派的金融経済理論では説明できないが、限定合理的な人間の持つ認知バイアスとして考えられる。第3、これらの投資家は、ディスポジション効果の傾向も強い。しかし、ディスポジション効果は、投資家の投資パフォーマンスに必ずしも悪影響を与えるとは限らない。第4、投機選好とディスポジション効果は負の関係にあるが、その因果関係は一意的ではない。 続いて、実証分析のための第一歩であるデータ収集の方法を考案し、協力可能な商品先物取引仲介業者に投資家匿名のデータの提供を依頼して、データの採取を行った。データは、投資家の属性、取引履歴と残高等に関するデータからなっており、サンプル数と時系列のいずれにおいても、莫大なデータ数になっている。その抽出と取捨選択においては、多くの困難を伴っていたが、おおむねに順調に進んできた。 次年度においては、収集されたデータを統計処理し、仮説の検証に入る予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進んでいるが、データ提供側に個人情報の保護に対する懸念がある。その懸念を解消するために、データの匿名性の確実化に努めている。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、平成23年度で収集された商品先物投資家の取引データとポジションデータに対して、統計処理を行い、実証研究を行うためのデータベースを作り上げる。その際、ディスポジション効果の研究で大きな成果を挙げている中国東北大学の閻石講師はデータの処理について協力してくれることになっている。 続いて、投資家の取引やポジションに関するデータベースをもとに、平均検定、比率検定、因子分析、共分散分析と回帰分析などで投資家の持つ情報量とその投機性の関係に光を当て、その投機性が投資家の限定合理的な行動なかんずくディスポジション効果にどのような影響を与えるかを明らかにする。 また、学会の中間発表、研究者との意見交換を通じて関連分野の研究者の批判と意見を取り入れて分析の精緻化を図る。分析の結果については、学会発表や雑誌掲載を通じて内外の同分野の研究者から意見と助言を取り入れて、国内外の学術雑誌に発表する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行、意見交換と発表のために国内に4回、海外に2回出張し、データベースの精緻化と統計分析ソフトの購入も予定している。
|