投資家のディスポジション効果についてはこれまで多くの研究が行われ、その普遍性が確認されてきた。しかし、ディスポジション効果と投機性との関係についてはほとんど取り上げられていない。本研究はこの空白を埋めるべく、投機性とディスポジション効果の関係に焦点を当てた。投機性の強い商品先物市場のデータで分析する計画だが、某証券会社の協力を得て、零細の個人投資家がより多く参加し、投機性がもっと強い株式市場を対象に分析することができた。 個人投資家のデータベースを用いて分析した結果、中国の投資家の強い投機性とディスポジション効果が確認され、投資家の投機性がディスポジション効果を緩和する作用があり、確かな情報に基づくと思われる数少ない銘柄への集中売買がかえってディスポジション効果を助長する作用があることが発見された。 また、投機性の強い中国の株式市場においては、投資家全体が損をしていたが、頻繁に売買するほどその損失が小さくなるという投機性の強いゼロサムゲーム的な市場の一面を明らかにすることもできた。 さらに、銘柄特性として各銘柄の売買回転率、負債比率と自己資本収益率といった銘柄属性が投資家行動に与える影響をも調べた。このいずれの属性もディスポジション効果を緩和するが、パフォーマンスへの影響については、自己資本収益率だけがパフォーマンスを改善する効果があることが検出された。
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