研究課題/領域番号 |
23530446
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
芹田 敏夫 青山学院大学, 経済学部, 教授 (80226688)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コーポレート・ファイナンス / サーベイ調査 / 株価水準 / 福島第一原子力発電事故 / 企業の自信過剰 / 投資決定基準 |
研究概要 |
サーベイ調査に基づいた事業会社の自社株評価を用いて、自社株評価に対する自信過剰が財務行動に与える影響について実証分析を行い、"Managerial Attitudes toward to Market Valuations"(法政大学の胥鵬氏との共著)という論文にまとめた。主な結果は、企業の自社株評価には明白な自信過剰が見られ、それは調査直前の株式リターンの影響が大きく、その回答がその後のペイアウト政策に影響を与えることが明らかになった。この結果は、サーベイ調査というこれまでにほとんど行われていない新しい手法で企業の自信過剰とその影響を明らかにした点に大きな意義がある。この論文は、初期の版を2011年5月に日本ファイナンス学会で、また12月にシドニーで開かれた24th Australasian Finance & Banking Conferenceにおいて報告した。 事業会社の投資決定と財務的意思決定の権限委譲について、全上場企業にサーベイ調査を行い、実証分析を行った(中央大学の花枝英樹氏との共同研究)。投資決定の考え方について標準的なファイナンス理論と比較して分析を行った。現在論文にまとめている最中で、主な結果として、日本企業が米国企業に比べてファイナンス理論が示す投資決定原理(NPVなど)を用いる頻度が少なく、理論的には望ましくない手法(回収期間など)の頻度が多いという、非常に興味深い事実が明らかになってきた。2012年度に国内の学会等で報告する予定である。 2011年3月の福島第一原発事故が株式市場に与えた影響について、原子力関連企業、代替エネルギー企業を対象に新研究を始め、実証分析を行った。これはきわめて重要かつ特異なイベントで、株式市場についての新しい知見が得られることが期待される。現在論文にまとめている最中で、2012年度に国内の学会等で報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)サーベイ調査に基づいた事業会社の自社株評価についての分析は、論文にまとめて、2度発表するなど、予定通りに進んでいる。 (2)また、事業会社の投資決定と財務的意思決定の権限委譲について、2011年度に全上場企業にサーベイ調査を行い、データを整理、分析を行い、論文作成中で、これも順調に進んでいる。 (3)2011年3月の東日本大震災の発生を受けて、新たに福島第一原発事故が株式市場に与えた影響について、新たな研究をスタートできたことも、事前の計画外の研究として進めることができた。 (4)日本企業の株価の絶対水準(名目株価)が株価形成に与える影響の分析については、2012年度以降に本格的に取り組む予定であり、この研究ではまだ明確な実証分析結果を得ていない。 以上(1)ー(4)の研究の進捗状況から区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
サーベイ調査に基づいた事業会社の自社株評価については、論文を改訂し、海外の学会等で報告し、雑誌に投稿する。 事業会社の投資決定について、昨年度に行った全上場企業にサーベイ調査の結果を分析し、投資決定の考え方がどのようなものかを標準的なファイナンス理論と比較して分析を行う。論文にまとめ、2012年度に国内外の学会等で報告を行う。 福島第一原発事故が株式市場に与えた影響について、実証分析を進めて論文にまとめ、2012年度に国内外の学会等で報告する予定である。 日本の株式市場における株価の絶対水準についての実証分析を行う。日本の上場企業の株価は株式分割が頻繁に行われないために、長期的には株価の絶対水準が上昇し続けており、その要因を実証的に分析する、論文にまとめる。そのために長期の個別銘柄の株価データが必要なため、実証分析の準備としてデータ整理も進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
・関連文献のサーベイのための書籍購入費用・国内外での学会等で報告するための旅費・データの整理分析補助者への謝金・データ分析用に必要なPC関連の消耗品の購入費用・英語論文を作成するための英文校正サービスの利用費用
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