2013年度の研究内容は、国際学会誌The Journal of Applied Operational Research に論文「Transition and reversion of Japanese corporate rating structure under the recent credit crises」を掲載した。本研究は、東洋経済新報社によるCSR格付を用いて、CSR格付が付与されている株式個別銘柄のリターンの特性について、TOPIX500をユニバースとする分析を試みた。その結果、以下の事実が確認された。全業種を対象にすると、(1)CSR格付を取得していることによる、リスク調整後超過収益は確認されなかった。(2)より高いCSR格付を取得していることによる、リスク調整後超過収益は確認されなかった。(3)上記の事実が、CSRを定義する4種類の格付「人材活用」「環境」「企業統治」「社会性」のいずれの側面からも、先行研究よりも頑健な想定の下で確認された。業種別分析の結果、 (1)CSR活動に対する企業評価への影響については、株式市場における評価は、まだ一定していない。(2)CSR活動は企業評価に対して有意な影響を及ぼすとは株式市場では評価されていない。(3)本稿で取り上げた東洋経済新報社のCSR格付によるCSR活動に対する評価の基準が、株式市場における評価の基準と乖離している。(4)CSR格付を付与されている企業数が少ないため、有意性の検証をしても、結果は不安定にならざるを得ない。(5)CSR格付による企業価値への影響に、本稿における業種区分に基づく業種効果は無い。 なる解釈が可能な結果を得た。
|