研究課題/領域番号 |
23530450
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
葛山 康典 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (10257222)
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キーワード | リアルオプション / 投資意思決定 |
研究概要 |
本稿では、近年伝統的な資本予算の分野で用いられてきた正味現在価値法や、内部収益率法などに変わって、実務的にも脚光を浴びているリアルオプションに基づく投資分析について、Lambrecht and Perraudin[14] に依拠しつつ、革新的な技術の導入によってプロジェクトへの投資額を減額することが可能なケースについて若干の検討を行った。 まず、一定の追加投資F を支払うことによって、プロジェクトへの投資額をkI; (0 < k < 1)に減額できる革新技術が存在するケースについて検討した。競争環境にある企業は、常にpreemptionのリスクに晒されている。特に先行者利得が大きい、あるいは先行者が市場を独占するようなケースでは、そのリスクはさらに顕著になる。近年ではIT 関連技術でそのような傾向が強いことは、広く認識されているように思われる。 このようなケースでは、何らかの形で投資の実行を前倒しする方法が存在すれば、仮にその方法の導入が費用を要するものであっても、結果として、その技術導入がプロジェクトの価値を高める場合がある。投資額が減少することから、投資実行の判断基準として用いられるキャッシュフローの閾値が引き下げられ投資が前倒しされる。 加えてLambrecht and Perraudin[14] にのモデルベースとし、一定の追加投資F を支払うことによって、プロジェクトへの投資額を減額出来る場合についても検討を加えた。 またこの場合に、投資の閾値が減少したことによって、プロジェクトの実行時点が、どの程度前倒しされるかについて分析した。到達時間の確率分布Harrison[3] に、若干の変数変換を行い、現時点でのキャッシュフローx が与えられたもとで、投資の閾値が実現される時間までの確率分布を算出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
投資家と経営者が互いに異なった時間視野を持つ状況を想定しその意思決定をモデル化し、分析するにあたって、第1年度の研究で、投資時刻に関する確率分布に関する結果が得られたため、これに関する若干の分析をを追加的に行った。 第2年次においては、より投資時刻に関して具体的な状況を想定し、(追加的な投資を行うことによって、新たな技術を導入し、プロジェクトの収益性を改善させることが可能なケースに関する分析)分析を行った。 また、経営者の報酬に関する Cooley et al.(2013) のモデル化等でリーマンショックにおける経営者の時間視野に関して、その報酬構造にアウトサイドバリューを組み込んだものモデル化が行われた。本研究においても、これらの構造との関連性を加えて議論を進めて行きたいと考えており、その検討に若干の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、経営者の報酬に関する Cooley et al.(2013) のモデル化等の概念をモデルに組み込むことが可能か否かを検討したい。 その検討結果をうけて、経営者の報酬関数について、投資家のプロジェクト全体に対する評価も加味しながら分析を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画書どおりを予定している。
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