研究課題/領域番号 |
23530455
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷口 勇仁 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60313970)
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研究分担者 |
小山 嚴也 関東学院大学, 経済学部, 教授 (60288347)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 企業事故 / リスクマネジメント / 企業社会的責任 / 企業不祥事 |
研究概要 |
本研究は4ヶ年計画で実施される.第1年度に当たる平成23年度の研究概要は以下の2点である.第1に,企業事故防止に関連する先行研究の広範なサーベイを行った.特に,高信頼性組織(HRO:High Reliability Organization)研究とヒューマンエラー研究において注目されている「安全文化(Safety Culture)」という概念について詳細な検討を行った.安全文化とは,安全を指向する文化であり,1986年に発生したチェルノブイリ原発事故に関する国際原子力機関の報告書において初めて示された概念である.企業事故研究の分析アプローチの前提である回顧的アプローチに注目して安全文化を検討した結果,事故を引き起こさない理念的な組織を想定し,そこから規範的に導出された組織文化を概念化したものであるという理論的特徴を持つことが明らかとなった.第2に,企業事故防止のマネジメントの実態を把握するために,2件のヒアリング調査を行った.ヒアリング先は運輸業と製造業であり,(1)当該企業で発生した企業事故の具体的内容(ヒヤリハットを含む),(2)企業事故の具体的な防止策,(3)企業事故防止に向けての課題についてヒアリングを行った.両企業とも安全文化という概念を利用しているが,安全文化を達成するための具体的施策は企業毎にかなり異なっていた.この安全文化の多義性について検討が必要である.また,売上,コスト,イノベーションといった組織目的(効率性,革新性)と安全性(企業事故防止)がコンフリクトを起こす可能性についても注目している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
企業事故防止のマネジメントに関連する先行研究については,予想以上に広範であったため,主に安全文化に限定してサーベイを行った.関連する先行研究を網羅しているとは言えないため,今後も継続してサーベイを行う必要がある.また,ヒアリングについては,震災の影響もあり,調整が難航したため,継続してより詳細なヒアリングを行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画は以下の3点である.第1に,前年度に引き続き,企業事故防止のマネジメントに関連する網羅的なサーベイを行う.前年度は主に安全文化に限定してサーベイを行ったが,制度にも注目してサーベイを行う予定である第2に,2次資料を中心とした企業事故防止のマネジメントに関連する具体的な施策の把握である.ヒヤリハット体験の共有等様々な施策が行われているが,それら施策の相互関連性も含めて整理検討を行う第3に,数社を対象としたヒアリング調査である.2次資料を基に明らかとなった具体的施策の有効性について,忌憚のない意見を収集し,有効な企業事故防止の施策について検討する
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次年度の研究費の使用計画 |
企業事故防止に関する先行研究の書籍のサーベイが難航し,3月中旬にずれこんだため,書籍の購入に関連する物品費の精算が遅れたが,翌年度4月の頭には処理が完了している.次年度の物品費は主に,企業事故防止のマネジメントに関連する先行研究の収集と,企業事故を防止する具体的な施策を示した2次資料に用いる.旅費は主に,企業事故防止を目的とした具体的施策の有効性を把握するためのヒアリング調査と,共同研究者との打合せに用いる
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