研究課題/領域番号 |
23530455
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷口 勇仁 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60313970)
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研究分担者 |
小山 嚴也 関東学院大学, 経済学部, 教授 (60288347)
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キーワード | 企業事故 / リスクマネジメント / 安全文化 |
研究概要 |
本研究は4ヶ年計画で実施される.第3年度にあたる平成25年度の研究概要は以下の2点である. 第1に,企業事故防止のマネジメントに関する先行研究の網羅的なサーベイを行った.具体的には,企業事故防止のマネジメントに関連する先行研究を,①リスクマネジメント研究,②高信頼性組織研究に分類し,各研究の特徴(分析アプローチ,企業事故防止策等)について検討を行った.検討の結果,リスクマネジメント研究は企業事故に対して演繹的なアプローチを,高信頼性組織研究は帰納的なアプローチを用いて企業事故防止を提言していることを明らかにした.また,両者の企業事故に対する最終的な提言には重なるところが非常に多いが,企業がその提言を実践する際には様々な障害や存在する可能性を指摘した. 第2に,日本企業3社に対して企業事故防止のマネジメント施策に関するインタビュー調査を行った.具体的には,「悪い情報を報告する仕組み」,「悪い報告をした人の処遇」などである.インタビューの結果,現場ではこれらの仕組みを,ホウレンソウ(報告・連絡・相談)という概念で扱っていることが明らかになった.また,先行研究では,「悪い情報を報告する仕組み」や「悪い報告をした人を誉める」ことを企業事故防止策として強調しているが,現場において実践するには様々な課題(ジレンマ)が存在することが明らかになった.これ以外にも,企業事故防止に関連する様々な施策の詳細について調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
企業事故防止のマネジメントに関する先行研究の包括的な整理を行うためには,企業事故に関連する先行研究のみならず,経営管理論や組織行動論の知見も重要であることが明らかになった.そのため,企業事故防止のマネジメントに関する先行研究の包括的な整理は来年度も継続して行う必要がある.また,新聞等によって公表されるような大規模な事故を引き起こした企業に対するインタビュー調査は非常に困難であった.そのため,大規模な事故を引き起こしたか否かに固執せず,現場における企業事故防止に関連する施策に関するインタビューを行うこととした.多くの現場において程度の差はあれ何らかの事故は発生しているため,事例は豊富であるが,二次資料などによる公式見解が確定していないため,多面的な角度からの事実検証が困難になる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画は以下の2点である. 第1に,前年度に引き続き,企業事故防止のマネジメントに関する網羅的なサーベイを行い,包括的な整理・検討を行うことである.特に,先行研究で提言されている企業事故防止策を企業で実践する際の組織的課題を明らかにするために,経営管理論や組織行動論などの知見をもとに,企業事故防止のマネジメントの全体像を把握したいと考えている. 第2に,1~2社を対象としたインタビュー調査である.具体的には,事故防止の具体的なマネジメントの施策の現状把握を目的としたインタビューである.その際には,ホウレンソウ(報告・連絡・相談)などの具体的な取組みに注目し,効果的な企業事故防止策や,企業事故防止策の実践の際の課題について調査を行う予定である.
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