研究課題/領域番号 |
23530456
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西出 優子 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60451506)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | NPO / 人材育成 / リーダーシップ / ソーシャルキャピタル / ネットワーク / 信頼 / 教育研修 / 人材マネジメント |
研究概要 |
本研究の目的は、信頼や規範、ネットワークなどの社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の視点から、アジアにおける非営利組織(NPO)の次世代人材育成およびリーダーシップの促進要因および阻害要因を抽出し、社会関係資本の創出や活用との関係を解明することである。 初年度の本年度は、まずはアジアのNPO、NPOの人材育成、リーダーシップの理論研究・実証研究について文献調査を主に行った。 国内では、特に東日本大震災後に被災地にて震災復興に取り組んできた多様なNPOのリーダーが展開してきた人材育成およびリーダーシップ開発の取り組みについてインタビュー調査を実施した。また、学生を中心とする次世代人材のボランティア活動やNPOへの参画プロセスや学習についてフィールドワークを実施した。これらの調査研究より、震災を契機に大きく動いてきた日本のNPOにおける次世代人材育成の成果や課題、人材の流動性、NPOや企業、自治体、大学等が協働して展開する次世代育成プログラムの潮流について示唆を得た。特にソーシャル・キャピタルの重要性、その中でもFacebookやTwitter等のSNSが果たしてきた、世代やセクターを超えて多様な人を巻き込むつながりのネットワークが果たした役割が明らかになった。アジアのNPOについては、中国の基金会や草の根NPOにおいて人材マネジメントのインタビュー調査を行った。 また、次世代を担う学生が主体的に震災復興ボランティア入門連続講座を開催し、その企画運営のプロセスを通して、多様な震災復興NPOリーダーや同世代の学生との意見交換を通して、その後のボランティア・NPO活動への契機となったことも重要な学びである。これら国内外における調査研究により、今後の本調査研究の方向性に大きな示唆を得た。 これらの調査研究の成果を報告書にとりまとめ、webページも含めて幅広く発信した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は、代表研究者が東日本大震災後に体調を崩し、本研究課題に取り組むことが困難な状況が続いたため、当初予定していたアジア複数国での調査実施やアジアで開催された国際NPO学会参加等を取りやめた(次年度に実施予定)。 そのような中でも、NPOのリーダーシップやソーシャルキャピタルに関する文献収集や先行研究は着実に進めてきた。また、震災後に東北で活躍しているNPOのリーダーにインタビュー調査等を実施することもできた。中国のNPOに関する文献調査および訪問インタビュー調査を実施することもできた。 さらに、高等教育学会や米国行政学会での研究成果報告を行うとともに、学生を中心に行った震災ボランティア入門講座の報告書や、震災復興関連で被災地の避難所間連携ネットワークや、義捐金送金ネットワークのあり方など、ソーシャルキャピタルの視点とNPOに関わる若者などの次世代育成の取り組みを中心とする報告書を発行することができた。 したがって、交付申請書に基づく本年度の目的達成度は、文献調査(90%)、海外調査(20%)、国内調査(80%)、成果報告(70%)と自己評価する。 これらの達成状況をふまえて、今後は研究の大幅な前進と成果の幅広い発信に最大限努力していく。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、アジアにおける非営利組織の次世代人材育成とリーダーシップに関する理論構築と実証分析を行い、社会関係資本の構築法および活用法を探り、非営利組織の次世代人材育成とリーダーシップおよびその開発手法のあり方について新たな理論的・実践的枠組みを提示することを目指している。 そのために、昨年度に引き続き、NPOの人材育成・リーダーシップおよび社会関係資本の最新の理論的動向をレビューする。また、NPOと社会関係資本の促進に積極的に取り組んでいる国内外の大学や実践の取り組みも比較検討する。さらに、評価手法の開発に向け、関連文献をレビューする。 さらに、NPOの次世代人材育成とリーダーシップの発揮に関して、NPOの代表・人事担当者にインタビュー調査を実施するとともに、NPOのリーダーのライフ・ヒストリーを調査分析する。国内では、東北地域および全国各地域におけるNPOや大学を訪問し、NPOの人材育成およびリーダーシップ開発の実態を調査する。また、協力団体において役員・職員・ボランティアに対するアンケート調査を実施し、定量的な分析も行う。海外では、インド、タイ、中国、韓国、ベトナムの取り組みについて調査を実施する。 これらの調査結果を質的分析ソフトウェアMAXQDAを用いて分析し、アジアにおけるNPOのリーダーシップに関する比較分析を行う。その調査分析結果をふまえ、NPOの次世代育成およびリーダーシップ開発に向けた社会関係資本の評価手法を開発する。 研究成果は、日本NPO学会を始めとした学会報告や論文投稿、公開シンポジウム等を通して広く発信する。 研究を遂行する上で、昨年度課題となった代表研究者の体調管理を万全にし、年次計画を立て直して遅れを取り戻すべく、調査研究を計画的に着実に遂行していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の経費は、物品費、旅費、謝金などの配分のバランスが取れており、かつ積算根拠も明確であるので、十分妥当である。また、航空運賃等は格安航空券の運賃を想定しており、効率的かつ適正な経費の使途となっている。本研究の実施に際し、文献調査を通して理論構築の基礎を固める上で、最新の専門図書を、特にアジアの専門書を中心に揃え(図書費)、国内外の訪問調査の際に記録用のデジタル物品を用意し(設備備品費・消耗品費)、国内外における調査研究を行い(旅費)、学会等で成果を報告し(旅費・会場費・印刷費)、専門知識を提供してもらう(謝金)必要がある。また、経費の積算は、平均的な市場価格に基づいて行った。 来年度は、研究費を以下の目的で使用する予定である。なお、昨年度の未使用金額と本年度の交付予定金額を合計した金額を基に算出した。【物品費】図書費:アジアのNPO、NPOの人材育成・人的資源管理、リーダーシップ、ソーシャルキャピタル、評価に関する専門書:5分野x20冊@3千円【海外旅費】インド、タイ、中国、韓国、ベトナムの5カ国におけるNPOの人材育成とリーダーシップに関する実地調査および米国の国際学会での成果報告の旅費:6か国@200千円【国内旅費】東北地方および全国のNPOのリーダーシップに関する事例調査実施および日本NPO学会・非営利法人研究学会等での成果報告のための国内旅費:10地域@50千円【謝金】資料収集や文献調査補助、本研究ホームページ(日英)作成、調査の連絡調整のため、研究補助者謝金:5名x10千円x14日、専門的知識の提供:10名x20千円
|