研究課題/領域番号 |
23530456
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西出 優子 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60451506)
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キーワード | 国際情報交換・アジア / NPO / 人材育成 / リーダーシップ / 人材マネジメント / ソーシャル・キャピタル / 若者 / 社会変革 |
研究概要 |
アジアのNPOの人材育成やリーダーシップの実態を解明するため、2年目の本年度は、アジアのNPOやその制度、組織経営や人材マネジメントに関する文献調査や事例調査を実施し、その中間成果を学会や報告書を通して発信した。 アジアのNPOについては、中国、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、計6か国におけるNPOを取り巻く社会制度や組織経営、人材管理の実態について、主に当該国出身の調査補助者と連携協力し、文献調査・インタビュー調査を実施した。 日本国内では、NPOによる若者や次世代の人材育成やリーダーの取り組みに関するフィールドワーク、参与観察、文献調査を実施した。また、NPOでのボランティアやインターンシップを通した次世代人材の成長プロセスの分析を、アクションリサーチの手法で実施した。さらに、NPOが主催する事業への参加を通した参加者の意識や行動変容についてソーシャルキャピタルの視点からアンケート調査を実施した。海外や日本で活躍するNPOのリーダーによる研究会・講演会・ワークショップの開催も実施し、国内外のNPOにおけるキャリアパスやリーダーシップ研修、人材育成を含めた人材マネジメントについて示唆を得ることができた。 これらの成果を米国公共経営学会や論文・報告書等で発信した。アジアのNPOを取り巻く社会制度や組織経営の実態、若者の人材育成やこどもの学習支援に取り組むNPO、若者のボランティアやインターンを受け入れているNPO、これらNPOでのボランティア活動やインターンシップに参加した学生の意識や行動変容プロセスに関する事例調査やアクションリサーチの成果を、学会報告、NPOへの就職やキャリアに関する調査論文や、NPOでのボランティアやインターンシップを経験した学生の学びや成長に関する報告書、市民音楽祭の出場者アンケート調査結果、等にとりまとめて発信することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジアにおけるNPOの①次世代人材育成およびリーダーシップの実態を解明し、②それらの促進・阻害要因を抽出し、③社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)との関係を解明するのが本研究の目的である。 現在までに①については順調に進展しており、②と③についても調査結果やデータ収集は進んでいる。これらの緻密な分析や解釈については、次年度に国際比較およびソーシャル・キャピタルの視点から分析を行う予定である。 ①については、連携研究者や調査補助者の事情により対象国や地域に若干の変更はあったものの、アジア6か国におけるNPOをとりまく制度や経営、人材育成について、文献調査やインタビュー調査等を通した実態把握を行うことができた。日本国内においても、若者の人材育成に取り組んでいるNPOや、未来の社会を担うこどもの学習支援に取り組んでいるNPO、多くの若者のボランティアやインターンを受け入れているNPO、さらにはこうしたNPOでのボランティア活動やインターンシップに参加している学生の意識や行動変容プロセスについて、事例調査やアクションリサーチを実施することができた。 これらの調査研究の成果を、米国公共経営学会での報告や複数の報告書・論文にまとめて発信することができができたのは、中間成果のとりまとめとしては、おおむね順調に進展しているといえる。 課題である②③の阻害・促進要因やソーシャルキャピタルとの関係の解明、国際比較研究は、最終年度に国際研究者や連携研究者、調査補助者との議論や連携も行いながら、明確な答えと示唆を導き出して、当初の目的を達成していく。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる25年度においては、①追跡調査およびさらなる実態調査の実施、②国際比較分析および論文等の執筆、③成果の発信、という三つの推進策を講じていく。 ①追跡調査と新規調査:これまで実施してきたアジア各国や日本国内を対象とした調査は、対象国や地域によって内容や質にばらつきがあるので、今後はこのギャップを埋めるための追跡調査を国内外で実施する。さらに、まだ実施ができていない他のアジアの対象国や国内NPOについても、新規にインタビュー調査や実態調査を実施する。その一環として、10回以上の研究会・講演会の開催や国際学会での国際研究者との議論や交流も行っていく。 ②国際比較分析と論文等執筆:これまでと上記①で実施した調査結果から、質の高い研究成果を生み出すために、国際比較分析を含めて、調査結果の緻密な分析を行い、論文および報告書を執筆する。 ③成果の発信:3年間にわたる本研究の集大成として、その成果を国内外の学会や学術誌・報告書、シンポジウムやウェブサイトを通して幅広く学界や社会に発信していく。具体的には、本研究の成果をNonprofit and Voluntary Sector Quarterly, Nonprofit Management and Leadership, Voluntas等の国際学術誌および『ノンプロフィット・レビュー』、『非営利法人研究学会誌』、『組織科学』、『人材育成研究』等の国内学術誌に投稿する。また、NPOや教育関係者、学生等も対象にした研究会・講演会・シンポジウムを開催し、本研究の成果を実際に活用できると考えられる社会、組織や人に還元していく。さらに、研究成果の概要をわかりやくまとめて英語・日本語の報告書にし、関連機関に配布するとともに、ウェブサイトからも閲覧・ダウンロード可能にし、本研究の学術的・社会的価値をグローバルに発信していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とともに研究遂行に使用する。具体的には、研究推進策①追跡調査・実態調査、②国際比較分析・論文執筆、③成果の発信、に応じて使用計画をたてた。 ①調査および国際研究者との交流・議論(書籍資料等物品費・調査旅費・専門家調査補助者謝金):東北NPO調査(10回)、市民社会研究フォーラム(東京5回)、NPO研究フォーラム(大阪5回)、タイ・マレーシア(8月)、韓国(10月)、台湾(12月)、NPO・ボランティア学会(11月米国) ②国際比較分析と論文等執筆(調査補助者謝金) ③研究成果の発信(学会報告旅費・英語論文投稿校閲費・研究会シンポジウム講師補助者謝金)【海外3学会】ボランティア研究学会(9月英国)、国際サードセクター研究学会(10月韓国)、北米公共経営学会(11月米国)、【国内5学会】非営利法人学会(9月)、日本NPO学会震災特別フォーラム(9月)、国際ボランティア学会(11月)、人材育成学会(12月)、日本NPO学会(3月)、【研究会・講演会・シンポジウムの開催(計14回)】研究会・講演会13回(5月2回、6月3回、7月3回、10月1回、11月1回、12月1回、1月1回)、シンポジウム1回:2月、【英語論文校閲投稿費】Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly, Nonprofit Management and Leadership, Voluntasの3ジャーナル) 上記を費目別に分類すると、物品費(書籍・資料、分析ソフト、PC関連備品)、調査研究旅費(海外4回、国内20回)、成果報告旅費(海外3回、国内5回)、謝金(講師・専門家謝金20名、調査補助者謝金10名x12か月、論文校閲・投稿料3論文)、その他(シンポジウム会場費)を予定している。
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