本研究の目的は、信頼やネットワークといったソーシャル・キャピタルの視点から、アジアにおけるNPOの次世代人材育成およびリーダーシップの促進・阻害要因を抽出し、その創出・活用との関係を解明することである。 最終年度においては、これまでの調査に対して追加調査・比較分析を行ない、新たな知見をとりまとめるとともに、研究期間全体を通した成果をまとめた。具体的には、国内外で調査を実施し、その成果を日本NPO学会等で報告し、国内外の学術誌に投稿する準備を進めた。アジアにおいては、NGO・NPOの発展が顕著な台湾におけるまちづくりや環境のNPOおよび中間支援組織・NGOネットワークの創業プロセスやその中におけるリーダーシップの役割や人材育成について、インタビュー調査を実施した。 国内においては、東北や沖縄において、震災復興の視点から福島からの親子を受け入れているNPOや、環境・まちづくりなど、多様な分野におけるNPOの経営者に対するインタビュー調査を実施した。 また、米国・東北のNPOらと連携し、「日米大学・市民活動ワークショップ」を企画実施し、そのプロセスにおいても、多数の学生を巻き込み、市民社会および大学・学生との連携、市民力・リーダーシップ育成の実践・考察を行なった。また、人材育成、まちづくり、リーダーシップ等をテーマとしたNPO経営者・研究者らによる研究会も開催した。 本研究の意義は、これまで欧米を中心に議論されてきたNPOの人材育成・マネジメントにおいて、日本を含めたアジアを対象に、丁寧なヒアリング調査を通して、その実態や課題について明らかにしたことにある。 本研究の重要性は、近年自然災害が多発しているアジアにおいて、ソーシャルキャピタル、相互扶助、共感を核とした地域づくり・心の復興をNPO・市民社会が推進していくにあたり、有用な示唆を提示したことにある。
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