研究課題/領域番号 |
23530460
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
周佐 喜和 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (50216149)
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研究分担者 |
曹 斗燮 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 教授 (20262834)
銭 佑錫 中京大学, 経営学部, 教授 (00329658)
二神 枝保 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 教授 (10267429)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際競争戦略 / 海外子会社の役割 / 日系一般電子部品メーカー / 企業間取引関係 / 多国籍企業の組織 |
研究概要 |
今年度は、日系電子部品メーカーの国内事業拠点4か所(TDK研究開発センター、東光鶴ヶ島本社、HOYA長坂事業所、FDKトワイセル)並びに、中国華南・香港地域の事業拠点(FEDフェライト、香港東光)への訪問聴き取り調査を実施した。また、経営の国際比較の視点から中国華南地域及びマレーシアで、韓国三星電機の訪問聴き取り調査を実施した。そして、調査に付随して、調査結果の検討会の場を設けた。調査の結果、日系電子部品の30年以上にわたる競争優位を支えたのは、絶えざる技術革新と製品・事業分野の入れ替えであることが判明した。この30年の間、単に事業規模が拡大しただけでなく、新規の製品分野・事業分野を開拓することによって、これらの企業は成長を持続することができたのである。その際、東アジア・東南アジア地域の海外子会社が大きな貢献を果たしていることが明らかになった。第一に、新たな顧客の開拓である。30年の間に、日系電子部品メーカーは、日系セットメーカー(完成品メーカー)への依存度を下げ、韓国系メーカーや中国・台湾系メーカーなど海外企業への依存度を高めながら、成長を続けてきた。そこで、海外メーカーとの取引の第一線に立ち、相手先の情報収集に多大の貢献を果たしてきたのが、この地域の海外事業拠点であることが判明した。また、これらの海外事業拠点の中には、生産技術や製品技術の面で、日本本国にはない能力を持つところも現れてきたことも分かった。これは、日本での生産の縮小傾向を反映したものと理解できる。しかし、同時に、これらの日系電子部品メーカーを取り巻く国際競争環境が厳しさを増していることも明らかになった。海外の一流のセットメーカーへの浸透という点に関しては、韓国や台湾メーカーが積極的な攻勢をかけており、日系電子部品メーカーが押されつつある現状が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、日系電子部品メーカーの国内事業拠点4か所(TDK研究開発センター、東光鶴ヶ島本社、HOYA長坂事業所、FDKトワイセル)並びに、中国華南・香港地域の事業拠点(FEDフェライト、香港東光)への訪問聴き取り調査を実施した。また、経営の国際比較の視点から中国華南地域及びマレーシアで、韓国三星電機の訪問聴き取り調査を実施した。そして、調査に付随して、調査結果の検討会の場を設けた。当初は、もっと訪問企業と訪問地域を拡大する予定であったが、東日本大震災とタイの洪水被害といった災害の影響、及びテレビ事業に代表されるエレクトロニクス産業の不振の影響のため、計画通りの調査を実施できなかった。対象となる日系電子部品メーカーもこうした影響を受けて、国内・海外の工場閉鎖・再編などに着手したところであり、学術調査の受け入れ態勢が整わなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた成果を基にして、訪問調査を継続する。その際、前年度に実施できなった企業にも調査依頼を行い、調査対象企業を増やしていく。ただし、調査対象企業が、現在、大規模なリストラクチャリングを検討・実施していることを考慮し、調査実施年度の繰り下げの可能性も検討する。また、工場訪問を次年度以降にし、本社や海外の地域統括会社の訪問を先に行うことも考える。また、比較検討対象として、海外の部品メーカー、ならびに自動車部品など他産業の企業への訪問調査も適宜実施していく。調査の項目としては、前年度に引き続き、(1)製品技術・生産技術の改良・開発、(2)現地におけるセットメーカーやサプライヤーとの新たな関係構築、(3)本国親会社や他の海外子会社との間の関係の転換、という三つの問題領域を中心にする。前年度は、(3)の点についての調査があまりできなかったので、今後は重点的に聴き取りを行っていく方針である。また、日系電子部品メーカーは、現在、セットメーカーまで含めた業界構造の転換の最中にあり、この点では当初の研究計画立案時の想定を大幅に超えて事態が進展していることを重視し、今後のグローバル戦略の内容についても、聴き取りを強化していくことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に得られた成果を基にして、訪問調査を継続する。第一に、日本本社を訪問し、海外調査で浮かび上がった経営課題への対応について、聞き取り調査を行う。第二に、東南アジアの海外子会社を訪問し、現地での技術改善や新規の顧客やサプライヤーの開拓の実績、現地側から見た日本親会社の経営の問題点などに関する聞き取りを実施する。対象地域は、タイ、ベトナム、インドネシアなど、これまで日系部品メーカーの進出が盛んだった地域を第一候補として考えるが、インド、ミャンマー、ラオスなど、近年注目を集めるようになった国や地域も候補の中に含めて考えている。また、調査の受入れ状況によっては、東南アジア地域以外の東アジア(韓国、台湾、中国など)や欧米諸国で調査を実施する可能性もある。文献・資料収集も、必要に応じて行っていく予定である。他の物品費・謝金などに関しては、必要最小限のものに限定して、使用する計画である。
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