研究の最終年度である平成25年度は、前半で前年度までに得られた研究成果で構築したモデルの有効性を検証すべく、事例研究のヒアリング調査を行い、後半ではその研究成果を論文等に取り纏める作業を行った。 この3年間の研究では、企業が新事業開発に取り組むさいには、提供する製品やサービスを生産して顧客に配給する活動の仕組みとしての事業システムと、その提供活動を通じて収益を上げる仕組みとしてのビジネスモデルの創出と結合が、事業化促進のカギを握るとの仮説を立て、これを検証する事例調査を実施した。結果として、その仮説を支持する事例を中小企業を中心にいくつか収集することはできたが、大企業の成功事例は期待したほどの数を得ることができなかった。 同時に、事例調査から明らかになったこととして、新事業開発の前進を阻む要因はケース・バイ・ケースであり、その特定化や一般化は困難であった。事業化の実現にはアイデアの着想から経営として軌道に乗るまでに、10年近い年月を要する場合がほとんどであり、その間に一進一退を繰り返しながら活動が進む中で、事業化の後退をもたらす原因は、マネジメントとして組織がコントロール可能な要因ばかりではなく、リーマン・ショックや東日本大震災のような外部環境の劇的な変化や、技術進歩や政府の規制など、事業着手時には事前に想定できない諸要因が大きく影響することを、あらためて認識した。 そこで研究の途中から、組織は将来の不確実性に対してマネジメントとしてどのように対処し得るかと、製品の設計段階において機能・性能を重視した設計とは視点を異にした設計に着目した研究を付加することにした。しかしながら、その取組は時間的な制約もあって十分な成果を得るまでには至らず、今後も研究を継続する予定である。
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