2014年度の課題は,SECIモデルの2つの象限(表出化と連結化)について,特許データを用いた分析と,新たなデータとの接合を検討することにあった.まず,連結化に関しては,昨年度『組織科学』誌で発表したデータ分析をさらに推し進め,世界的にまだ数が少ないNetwork Forming(ネットワーク生成)の効果に関する研究を行い,パフォーマンスの高い発明者に特有なネットワーク構築戦術を明らかにすることに成功した.本研究成果は,日本知財学会にて報告を行った他,2015年度の組織学会研究発表大会にて報告を予定している. 次に,表出化に関しては,自動車企業を中心とした技術知識のフローを,特許データによって検出することに成功し,BAI,PICMETの2つの国際会議で報告した.報告において得た示唆をもとに,特許情報からなる自動車部品メーカーからなる技術フローデータと取引ネットワークとを接合する案が生まれ,公刊データをもとに,1000社以上に及ぶ自動車系列企業の取引ネットワーク,および部品供給に関するデータ収集を行った.この最初の報告は,2015年度のSIBR Conferenceを予定している(採択済).ただし,このデータ収集と整理には大変な労力を必要としたため,特許データとの接合に関しては十分な時間を確保できなかった.今後さらに分析を推し進めていく予定である. 以上,本研究課題の幾つかの分析視角は実現できなかったものの,当初目標としていた知識創造の4つのフェーズについては分析結果がほぼ出揃い,特許情報をもとにした知識創造活動について,かなり明らかにすることができた.今後はこれらの研究成果をまとめ,数年内に著書を刊行したいと考えている.
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