企業の不祥事に対する従来の取り組みは、危機管理システム・コンプライアンス・CSRという予防策とディフェンスが中心である。しかし、本研究の研究対象であるコーポレート・アポロジアは、「不祥事はどの企業にも起こりえるもので、予防策とディフェンスには限界がある。予防策・ディフェンスよりも、復活の手法に主眼をおくべきだ」との発想からアメリカで生まれた新たな危機対応のあり方である。本研究では、①企業不祥事のケース・スタディー、②マス・メディア情報の分析、③当事者のナラティブ分析により、コーポレート・アポロジアの有効性を考察した。さらに、企業危機管理における理論的発展を目指した。平成25年度は、日本企業の不祥事に焦点を当て、主に、トヨタ自動車によるリコール問題(2010年)に関するケース・スタディーを行った。当事者の発言に着目し、企業不祥事の「リアリティー」がどのように構築されていたかも分析した。判明したことは、次のとおりである。①企業危機は、当該企業の当事者が誤ったリアリティーを構築し、世間一般のリアリティーとギャップが生じることにより、起こった。②企業の当事者が、この事実に気づき、自らのリアリティーを再構築することから、適切な危機対応が始まった。③それを公に「発言」する必要があった。④その結果、世間一般のリアリティーとのギャップを修復することが可能になった。⑤このコミュニケーションによるリアリティー修復を「アポロジア」と呼び、この手法により、企業危機を終息した。成果として、2013年9月18日-10日に、Aarhus (Denmark)で開催されたCSR Communication Conference 2013で学会発表した。さらに、2014年3月19日-22日にNapa (U.S.A.)で開催されたWestern Academy of Management (WAM) Conference 2014でも学会発表(共同)した。この学会で発表した論文は、WAM 2014 Past Presidents Best Paper Nomineeにもなった。
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