前年度までは、企業およびその従業員に対してアンケート調査を実施し、そのデータを統計学的分析にかける作業を行った。その結果、期待した成果を得ることができた。その成果とは、障がい者社員が健常者社員の仕事満足度を改善することを通して、経営を改善すること、その効果は、差の検定や相関係数などから、「知る人ぞ知る」効果になること、の2点であった。その結果については、中間報告にまとめた。 2013年度においては、それまで集めたデータをもとに最終的な分析を行い、中間報告と同様の成果が出るかを確認した。おおよその傾向は同じであったが、AMOSによる共分散構造分析の結果、より単純なモデルが析出された。障がい者が健常者に与える要因が絞り込めるとともに、よしシンプルに表現することができた。 ただ、その過程で、新たな課題が見えてきた。それは、「なにゆえそのような効果が生ずるか」ということである。そこで、障がい者が経営改善効果を発揮している(これを組織内マクロ労働生産性改善効果と表現することとした)起業を訪問し、ヒアリング調査をすると共に、心理学や社会学を中心に文献を渉猟し、人と人とが影響を与え合うことによって、生産性が改善したり、能力を発揮したりといった研究を負うこととした。 その結果、経営の現場で、障がい者を雇用することで何が起こり、健常者の生産性が改善するかを明らかにすることができた。また、心理学の領域であるが、レビンの「場の理論」が組織内マクロ労働生産性改善効果を最も適切に説明しているのではないかと判断した。 2013年度は、研究成果のまとめを行い、『なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのか』中央法規出版、の形で出版を果たした。
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