研究課題/領域番号 |
23530481
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
北島 啓嗣 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (60398980)
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研究分担者 |
崔 容熏 同志社大学, 商学部, 教授 (70315836)
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キーワード | 所有権 / ケイパビリティ / 百貨店 |
研究概要 |
平成24年度は、特に国内視察を行い、また理論的な考察を行った。 そのなかから得られた知見を簡単に要約しておく。SCは,基本的に個々の店舗が,店舗の立地する地域の環境に対し,いかにアジャストしていくかが問われる.SCは,その投資額の大きさもあり,簡単にスクラップできない.個々の商圏のニーズに合わせたマーチャンダイジングを行っていく.複数のSC店舗を持つ企業であっても,異なった商圏の状況に合わせて,テナントをチョイスし,商圏のニーズに対処する.SCの商圏は,店舗規模にも異なるが,店舗の周囲の数キロから数十キロである.その範囲の中に,数年,あるいは10年の内に,大きな,そしてSCにとって重要な環境変化が起こる蓋然性は極めて高い.負の影響があったテナントは閉鎖し,正の影響を受けるテナントに入れ替えねばならない.この絶えず変化する商圏のニーズに,いかに素早く,そして少ないコストで対応していくかは,SCを含む大型小売店舗にとっては重要である. ティース(2007)は,ダイナミック・ケイパビリティを唱え、環境に対処する能力の構成要素として,センシング(感知),機会のシージング(活用),資源のリコンフィギュレーション(再構成)の三つを区分する.頻繁に,しかも大きく変化する商圏に対し,問題となるのは,この中で特に,資源のリコンフィギュレーションの能力である.SCは,環境の変化に対応するために,その中にあるテナントを頻繁に入れ替える.SCは,テナント部分に相当する投資をしていない.従って,環境変化に伴い,それをスクラップするとしても,サンクコストが少ない.環境が大きく変化した時でも,小さいコストで対応できる.これが,環境の変化に対応しやすいダイナミック・ケイパビリティを形作っている.さらに,新しいイノベーションを柔軟に取り込める一種のオープン・イノベーションを実現している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗が遅れている部分は、本研究のうち、国際比較の領域である。本研究は、SCを運営していない小売企業が、中国に進出する場合にSCの形式を取る場合は、日本と異なる環境に小売企業が置かれる。その場合に、所有権構造を変化させると考えられるが、それはいかなる環境条件がそうさせているのか。特に成長著しいアジアへの小売業の進出に当たって、日本と異なる出店形式が必要とされる「環境」を、明確に認識することは必要であろう。この意味で、本研究は国際的な比較の視野を持つ。海外調査に関しては、上海等だけではなく、これから進出が予想される内陸部の各都市にSCあるいは百貨店あるいはその他の業態での進出を選択するのか、またその判断がいかなる根拠に基づいて判断されるのかを問うていく予定であった。 しかし、尖閣諸島問題から、中国への調査は、中国側の事情により白紙となった。これによって、研究計画の当該部分は、日中関係が落ち着くのを待ってから進行させるか、あるいは、中国以外のアジア圏またそれ以外への調査その他に切り替えを行うかの選択を迫られている。どちらにしても、コネクションを再構築することとなり、時間を必要とする。 それ以外の部分、すなわち個別企業への聞き取り調査を軸にした実態を把握は、予定通りに進行している。焦点は、SCの機能の経済学的な所有権構造であり、この視点を軸に、 1.不動産業 2.SCと競合する大型商業施設(百貨店等)3.商店街組織(組合等)の三つの業態・業種との比較を行っていく。調査は、1.SCの本部組織と、2.SC内に出店するテナント の両面への調査を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
中国への調査は、尖閣諸島等の状況により見直しとなった。研究計画の当該部分は、日中関係が落ち着くのを待ってから進行させるか、あるいは、中国以外のアジア圏またそれ以外への調査その他に切り替えを行うかの選択を迫られている。どちらにしても、コネクションを再構築することとなり、時間を必要とする。中国等だけではなく、これから進出が予想されるベトナム、インドネシアなどにSCあるいは百貨店あるいはその他の業態での進出を選択するのか、またその判断がいかなる根拠に基づいて判断されるのかを研究の対象にすることを考える。また、あるいはロシア等も考えられる。また、アメリカ、ヨーロッパの先進地域の状況把握を先んじて行うことも考慮する。 それ以外の部分、すなわち個別企業への聞き取り調査を軸にした実態を把握は、予定通りに進行している。
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次年度の研究費の使用計画 |
最低、一回の海外への調査を行う。中国以外のアジア圏またそれ以外への調査その他に切り替えを行い、これから進出が予想されるベトナム、インドネシアなどにSCあるいは百貨店あるいはその他の業態での進出を選択するのか、またその判断がいかなる根拠に基づいて判断されるのかを研究の対象にすることを考える。また、あるいはロシア等も考えられる。また、アメリカ、ヨーロッパの先進地域の状況把握を先んじて行うことも考慮する。 2013年-2014年の研究計画後半においては前半の定性的な調査を元に調査票を設計し、SCを定量的に把握する。調査は、1.SCの本部組織と、2.SC内に出店するテナント の両面への調査を行う。 平行して、日本のSCのマネジメントの実態を、他業態、業種との比較を行いつつ定性的・定量的に分析する。SCとの比較対象となるのは、1.不動産業 2.SCと競合する大型商業施設(百貨店等)3.商店街組織(組合等)の三つの業態・業種である。SCはそれらの特性を持ち、また一部は競合しまた協力している。
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