研究課題/領域番号 |
23530493
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
早坂 明彦 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (40238093)
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研究分担者 |
幸田 浩文 東洋大学, 経営学部, 教授 (60178217)
丹羽 浩正 八戸大学, ビジネス学部, 教授 (50387122)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 男性育児休業者 / 職場復帰支援 / キャリア形成 / 戦力化 |
研究概要 |
次世代育成支援法が施行され,多くの企業でその行動計画に基づき男性社員が育児休業を取得しているという仮説のもと,実際に育児休業を取得した男性社員は,どのような思いで育児休業を取得したのか,育児休業で得た経験を職場復帰した時に,どのように活かしているのか。時間に制約された働き方をしている人たちへの理解,行動変容はあるのか。また,職場復帰のための支援制度があるのか,さらに育児休業期間は彼らのキャリア形成にどのように影響しているのか,否か。そして彼らを企業はどのように戦力化しようとしているのかを実証的に調査,分析し,男性の育児休業取得が企業経営や人事管理に及ぼす影響の長短を解明することを研究目的とし,平成23度は,主に基礎文献研究と,男性育児休業取得者,及び人事担当者との面接調査を実施した。 まず,基礎文献研究では,ヨーロッパ諸国と日本の制度の違い等が明らかになった。 EUでは,育児休業を「男女労働者の個人的権利」と位置づけており,男性の育児休業が女性と同じレベルで期待されていることは特筆すべきであろう。日本の場合,育児の担い手としての休業保障という意味合いが強く,親が育児をすることは権利である,という意味合いは薄いといえる。 また,面接調査を行った人事担当者は,概ね男性が育児休業を取得することに前向きな考え方をしているが,やはり男性の育児休業取得者は非常に少なく,2桁に乗せるためにはどうしたら良いのか試行錯誤の状況であった。実際に育児休業を取得した男性の一人は,配偶者が外国人(韓国人)ということもあって,1年3ヶ月という長期の育児休業を取得し,現在は原職復帰をしている。長期の育児休業を取得したことにより,子供に対する愛情の深さ,育児の苦労を体験できたことは良かったようである。また,女性社員の育児休業取得に対する考えも大きく変わり,取得の効果が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的である,実際に育児休業を取得した時の男性社員の思い,育児休業で得た経験を職場復帰した時に,どのように活かしているのか。時間に制約された働き方をしている人たちへの理解,行動変容はあるのか。また,職場復帰のための支援制度があるのか,さらに育児休業期間は彼らのキャリア形成にどのように影響しているのか,否か。そして彼らを企業はどのように戦力化しようとしているのかを実証的に調査,分析し,男性の育児休業取得が企業経営や人事管理に及ぼす影響の長短の解明について,第一に,国内外の論文,文献研究による理論的な研究,および仮説の検証と吟味等を行うと計画した。内外の論文,文献研究による理論研究は順調に進み,暫定仮説の検証は行うことができたが,その吟味については,必ずしも十分に行うことはできなかった。また,主要1,177社の中から男性が育児休業を取得した414社について,過去3年間の取得者の数,支援のための諸取り組み等々について分類,整理した。 第二に,企業の人事担当者や実際に育児休業を取得した男性社員数名に先行的な聞き取り調査を行い,定性的な分析から仮説の設定,修正,吟味を行うと計画した。実際に5社の人事担当者に面接調査を実施し,企業の取り組み等々についての定性的な調査を行い,平成24年度のアンケート調査に向けての質問項目の作成に寄与することができた。また,男性育児休業取得者には1名だけであるが面接調査を実施した。十分な数の面接ができなかったのが反省点であるが,平成24年度は依頼の手法を変えて十分なデータがとれるように努力をし,当初予定の年度計画を達成するようにする所存である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度も引き続き国内外の基礎的な文献研究を通し,先行研究のモデル,基礎理論を研究し,問題の所在を明らかにし,仮説の吟味をしながら,実証研究を行う。また,企業の人事担当者,及び男性育児休業取得者に対し聞き取り調査を継続させながら,並行して人事担当者,及び男性育児休業取得者にアンケート調査を行う。定性的な調査,分析から得られた情報や結果をもとに,定量的な分析であるアンケート調査は質問項目の作成,検討,吟味を行った上で行う。 具体的には,7月頃をめどに定量分析のためのアンケート調査を,企業の人事担当者に実施し,企業の取り組みや男性育児休業取得者の状況,雇用管理上のメリット,問題点,改善点や要望等を明らかにしたい。また,企業の人事担当者の協力を得て育児休業取得者に対するアンケートを実施する。(1)育児休業を取得したことによって男性社員にもたらされるものが何なのか。それを探求し,その効果を高めるための方策を明らかにしたい。それは,新しい生き方なのか,子育ての経験による人間的な成長なのか。仕事と育児・家事との両立の難しさの気づきなのか。(2)男性社員が育児休業を取得したことによるキャリア形成への影響はあるのか,否か。そして彼らを企業はどのように戦力化しようとしているのかを明らかにしたい。そして,アンケート結果の興味深い企業に対しては,8月と9月の約2ヶ月間をかけて,人事担当者や男性育児休業者に対する丁寧で,丹念な面接調査を行う。その期間で十分な面接調査が行えなかった場合は,その後随時面接調査を行い,仮説の検討及び修正を行う。 文献研究の成果と面接調査,アンケート調査の結果を分析しながら,日本と諸外国との比較,都市圏と地方都市との比較をしながら,仮説を吟味し精緻化し,研究成果の一部を学会,及び論文として発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度も引き続き文献研究を行い,仮説の吟味,精緻化を図るために国内外の文献や雑誌の購入として物品費が必要になる。並行して,21世紀職業財団,労働政策研究・研修機構,日本版カタリストの団体であるウィメンズ・イニシァティヴ,男女共同参画グローバル政策対話東京会議事務局,女性と仕事の未来館などの団体との研究交流と聞き取り調査,資料の収集のために交通費や複写費等が必要となる。 定量的な分析であるアンケート調査の質問項目の作成,検討,吟味を行った上で調査を行う。定量的な分析のためのアンケート調査を行うためにアンケート用紙を印刷するための印刷費が必要である。そのアンケート用紙を発送するための切手代である通信費や宛名書き,のり付け等のための文房具等の物品費が要る。アンケート用紙の印刷,封筒詰め等の発送業務を補助してもらうアルバイトの謝金が必要である。また,返信されたアンケート用紙のデータをパソコンに入力するために業務を補助するアルバイトの謝金が必要である。また,データ分析のためのソフト・ウェア,データを保存するためのCDやIO-DATAを購入するための物品費が必要である。 そして,大都市圏と地方都市との地域の特性,風土,文化等の比較をしながら企業の人事担当者や男性育児休業取得者に対する面接調査をするための旅費,さらに,研究成果の一部を学会で発表するための旅費が必要となる。 繰越金の170,897円の内,80,897円については,予算を執行済みで,旅費の一部をクレジットカードで支払った関係で決算が年度をまたいだものである。残りの90,000円については,調査企業とのスケジュールが合わず面接調査ができなかった旅費の一部なので,旅費に使用する予定である。
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