研究課題/領域番号 |
23530493
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
早坂 明彦 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (40238093)
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研究分担者 |
幸田 浩文 東洋大学, 経営学部, 教授 (60178217)
丹羽 浩正 八戸学院大学, ビジネス学部, 教授 (50387122)
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キーワード | 男性育児休業者 / 職場復帰支援 / キャリア形成 / 戦力化 / テレ・ワーク |
研究概要 |
次世代育成支援法が施行され,多くの企業でその行動計画に基づき男性社員が育児休業を取得しているという仮説のもと,実際に育児休業を取得した男性社員は,どのような思いで育児休業を取得したのか,育児休業で得た経験を職場復帰した時に,どのように活かしているのか。時間に制約された働き方をしている人たちへの理解,行動変容はあるのか。また,職場復帰のための支援制度があるのか,さらに育児休業期間は彼らのキャリア形成にどのように影響しているのか,否か。そして彼らを企業はどのように戦力化しようとしているのかを実証的に調査,分析し,男性の育児休業取得が企業経営や人事管理に及ぼす影響の長短を解明することを研究目的とし,平成23年度は,主に基礎文献研究と,男性育児休業取得者,及び人事担当者との面接調査を実施した。 まず,基礎文献研究では,平成23年度に引き続きヨーロッパ諸国の研究を行った。 EU中でもスェーデンでは,育児休業を法律で480日とし,母親と父親それぞれが60日間は必ずとることを義務づけており,ジェンダー平等を規定している。我が国では安倍首相が育児休業を3年間に延長することを提案しているが,経済界からは冷めた目で見られている。我が国でも政労使が十二分に話し合いをし,合意の上で法制化をすることが必要であろう。 また,面接調査を行った人事担当者は概ね男性が育児休業を取得することに前向きな考え方をしているが,やはり男性の育児休業取得者は非常に少なく,企業の現場でも取得者を拡大させるための創意工夫に試行錯誤をしているのが実情である。やはり,育児休業を長期間取得する男性社員モデルを早く作らなければならないと考える。また,その社員のキャリア形成についてのモデル化を行い,実施することが肝要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的である,実際に育児休業を取得した男性社員の,育児休業を取得した時の思い,育児休業で得た経験を職場復帰した時に,どのように活かしているのか。時間に制約された働き方をしている人たちへの理解,行動変容はあるのか。また,職場復帰のための支援制度があるのか,さらに育児休業期間は彼らのキャリア形成にどのように影響しているのか,否か。そして彼らを企業はどのように戦力化しようとしているのかを実証的に調査,分析し,男性の育児休業取得が企業経営や人事管理に及ぼす影響の長短の解明について,平成24年度も引き続き,第一に,国内外の論文,文献研究による理論的な研究,および仮説の検証と吟味等を行うと計画した。内外の論文,文献研究による理論研究は順調に進み,暫定仮説の検証,検討を行い,新たな仮説の設定等を行うことができた。また,今年度は主要1,128社のデータを分析し,昨年度行った主要1,117社の男性が育児休業を取得した414社のデータベースに,データの追加を行った。 第二に,企業の人事担当者に面接調査,および人事担当者へのアンケート調査を行うと計画した。これは,平成25年度に行う予定の男性社員に対する大量のアンケート調査のベースになるものであったが,当初予定した時期が遅れ,企業の会計決算の時期に重なってしまい,人事担当者へのアンケート調査を実施できなかった。平成25年度は,7月上旬に人事担当者へのアンケート,引き続き育児休業を取得した男性社員へのアンケート調査を実施し,当初予定の計画を達成する所存である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も引き続き国内外の基礎的な文献研究を通し,先行研究のモデル,基礎理論を研究し,問題の所在を明らかにし,仮説の吟味をしながら,実証研究を行う。また,引き続き企業の人事担当者,及び男性育児休業取得者に対し聞き取り調査を継続させながら,並行して人事担当者,及び男性育児休業取得者にアンケート調査を行う。定性的な調査,分析から得られた情報や結果をもとに,定量的な分析であるアンケート調査は質問項目の作成,検討,吟味を行った上で行う。 具体的には,7月頃をめどに定量分析のためのアンケート調査を,企業の人事担当者に実施し,企業の取り組みや男性育児休業取得者の状況,雇用管理上のメリット,問題点,改善点や要望等を明らかにしたい。また,企業の人事担当者の協力を得て育児休業取得者に対するアンケートを8月頃に実施する。①育児休業を取ったことによって男性社員にもたらされるものが何なのか。それを探求し,その効果を高めるための方策を明らかにしたい。それは,新しい生き方なのか,子育ての経験による人間的な成長なのか。仕事と育児・家事との両立の難しさの気づきなのか。②男性社員が育児休業を取得したことによるキャリア形成への影響はあるのか,否か。そして彼らを企業はどのように戦力化しようとしているのかを明らかにしたい。そして,アンケート結果の興味深い企業に対しては,8月と9月の約2ヶ月間をかけて,人事担当者や男性育児休業者に対する丁寧で,丹念な面接調査を行う。その期間で十分な面接調査が行えなかった場合は,その後随時面接調査を行い,仮説の検討及び修正を行う。 文献研究の成果と面接調査,アンケート調査の結果を分析しながら,日本と諸外国との比較,都市圏と地方都市との比較をしながら,仮説を吟味し精緻化し,研究成果の一部を学会,及び論文として発表,研究成果報告書を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度も引き続き文献研究を行い,仮説の吟味,精緻化を図るために国内外の文献や雑誌の購入として物品費が必要になる。並行して,21世紀職業財団,労働政策研究・研修機構,日本版カタリストの団体であるウィメンズ・イニシァティヴ,男女共同参画グローバル政策対話東京会議事務局,女性と仕事の未来館などの団体との研究交流と聞き取り調査,資料の収集のために交通費や複写費等が必要となる。 定量的な分析であるアンケート調査の質問項目の作成,検討,吟味を行った上で調査を行う。定量的な分析のためのアンケート調査を行うためにアンケート用紙を印刷するための印刷費が必要である。そのアンケート用紙を発送するための切手代である通信費や宛名書き,のり付け等のための文房具等の物品費が要る。アンケート用紙の印刷,封筒詰め等の発送業務を補助してもらうアルバイトの謝金が必要である。また,返信されたアンケート用紙のデータをパソコンに入力するために業務を補助するアルバイトの謝金が必要である。さらに,データを保存するためのCDやIOを購入するための物品費が必要である。 そして,大都市圏と地方都市との地域の特性,風土,文化等の比較をしながら企業の人事担当者や男性育児休業取得者に対する面接調査をするための旅費,さらに,研究成果の一部を学会で発表するための旅費,研究成果報告書を作成するための印刷費が必要である。 繰越金の171,715円は,調査企業とのスケジュールが合わず面接調査が出来なかった旅費の一部なので,旅費に使用する予定で,81,715円はアンケート調査の実施が一部できなかった分の通信費なので,通信費に使用する予定である。
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