研究課題/領域番号 |
23530496
|
研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
加藤 寛之 国士舘大学, 経営学部, 講師 (10410888)
|
研究分担者 |
具 承桓 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (20367949)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 資源蓄積 / 競争戦略 / イノベーション / 製品ライフサイクル / 雁行形態論 / サプライヤーシステム |
研究概要 |
本研究の目標は「日本の産業発展の縮図」としての造船産業を対象に、日本韓国中国の造船産業の主要プレイヤーの資源蓄積(人事制度含む)と競争戦略、競争優位の推移の背景を資源蓄積状況および人事制度に着目し、また各プレイヤーを立体的にかつ横断的に分析してすることにある。 具体的には、製品自体は成熟化・標準化しながらも新興国の経済成長を背景に市場が成熟期から成長期に戻ることもあり、その際に既存の有力企業は市場の再拡大の機会を捉えることが困難な状況に陥ることが造船産業の例から伺えるが、本研究はそのメカニズム解明を試みている。国内大手はもっとも資源蓄積のある企業群だったが、市場再拡大の機会をことごとく逃している。豊富な資源蓄積・人材を有しながら市場再拡大期になぜ活かせなかったのかに関して、多角化戦略の成否とそれにまつわる人事制度と人材配置推移について40年分の資料を用いて分析を試みている。また、日本の大手は凋落したが非上場の中手は韓国中国企業を上回るペースで飛躍的に成長しており、その成長を可能にした戦略と背後で戦略を支えるサプライヤーシステムについて明らかにしようとしている。 以上を踏まえて、本研究においては、具体的な研究課題として以下の四点を掲げている。(1)近年の日本造船産業における主役交代劇とその要因(各社の戦略転換)の分析、(2)造船のサプライヤーシステムの構造と機能の分析、(3)韓国・中国造船業の発展メカニズムと競争戦略の分析、(4)日中韓の造船産業の競争力比較分析の四点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度としてまず、「近年の日本造船産業における主役交代劇とその要因(各社の戦略転換)の背景」について公開資料とヒアリングを元に分析を行った。具体的成果としては、旧中手企業の急成長の背景についての分析成果を9月のアジア経営学会全国大会で発表後に論文投稿し、査読付き論文として『アジア経営研究』「造船産業の競争構図の変容と雁行形態論・塩地モデルの再検討」がアクセプトされた(加藤・具共著)。 また、日本の国内大手企業が戦略的失敗に追い込まれた背景についての分析成果を10月の組織学会全国大会において発表し、『組織科学(査読誌)』に「優良企業はなぜ成長期への再突入に適合できないのか?―成熟・衰退期への適合が再成長の桎梏へと変化するメカニズム―」を投稿し(加藤・具共著)審査中である。 また、韓国大手企業の大型投資による積極的な成長戦略とその背景、投資直後に通貨危機に直面した後に戦略がどのように変遷したかについてのプロセスについて、公開資料と韓国企業へのヒアリングをもとに分析し、論文(加藤・具共著)を作成中である。 更に、今後の造船調査に向けた予備的分析の成果を加藤が単著および共著で国士舘大学の紀要にまとめた。具体的には、「法的規制の変化が技術革新経路に与える影響―造船産業の生産工程イノベーションにおける日韓差異と背景の法的規制について(『経営論叢』単著)」、「モジュール化の利益の享受に関する考察(『経済研究所紀要』単著)」、「製品アーキテクチャの定義の整理と4つの測定指標の抽出(『経営研究所紀要』単著)」、「フィリピン造船業の急成長と海外直接投資論による考察(『経営研究所紀要』、林と共著)」の四本である。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の通り、本研究の4つの具体的研究課題の内、「近年の日本造船産業における主役交代劇とその要因(各社の戦略転換)の分析」については、査読誌に論文を投稿できるところまで到達しつつある(一本はアクセプトされた)。したがって、今後は、以上の成果を踏まえて、以下の3点に力点を置いて調査分析を進める予定である。すなわち、「造船のサプライヤーシステムの構造と機能の分析」と「韓国・中国造船業の発展メカニズムと競争戦略の分析」、「日中韓の造船産業の競争力比較分析」の3点である。 具体的には、(1)サプライヤーへの詳細なヒアリングと工場見学、アンケート調査を実施し、(2)韓国・中国の造船企業へのヒアリングとデータ収集を実施し、(3)日中韓のサプライヤーや製鉄業者、海運業者など関連プレイヤーにてヒアリングとデータ収集を行ってデータベースを作成する予定である。 24年度は特に、韓国の大手企業のトップマネジメント層へのヒアリングと、中国企業へのヒアリングを実施、公開資料から抽出した仮説の裏付け調査を重点的に行いたいと考えている。併せて、国内外のサプライヤー企業、および常石造船以外の国内造船所についても今後とも精力的にヒアリングを重ね、上記課題達成に向けて邁進する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究を推進するに当たり、経費の大きな部分を占めるのは旅費と設備費である。 本研究は研究方法として造船各社の造船所と本社へのヒアリングおよびサプライヤーへのヒアリングを重視しているため、これらに用いる費用がかなりの大部分を占める。日本国内の造船所およびサプライヤーは瀬戸内海周辺と長崎周辺に集中し、韓国の造船産業は南部に集中し、中国の造船産業も南部沿岸が中心である。これらの造船所と本社へのヒアリングを順次行う予定である。 また、併せて収集した資料をデータベース化するため、大学院生のアルバイト代を想定している。収集したデータをデータ化して共有するために、スキャナー機能付きプリンターおよびノートパソコン、の購入も想定している。
|