本研究の目的は、「日本の産業発展の縮図」としての造船産業を中心に、日本韓国中国の造船産業の主要プレイヤーの資源蓄積(人事制度含む)と競争戦略、競争優位の推移の背景を資源蓄積状況および人事制度に着目し、また各プレイヤーの戦略と行為を立体的かつ横断的に分析することにある。 具体的には、製品は成熟化・標準化しながらも新興国の経済成長を背景に市場が成熟期から成長期に戻ることがあり、その際に既存の有力企業は市場拡大の機会を捉えることが困難な状況に陥ることが造船産業の例から窺えるが本研究はそのメカニズムの解明を試みている。豊富な資源蓄積・人材を有していながら市場再拡大期になぜ活かせなかったのかに関して、多角化線りゅあくの成否とそれにまつわる人事制度と人材配置の推移について40年分の資料を用いて分析している。また、日本の大手が市場再拡大期に成長い機会を活かせなかった一方で、非上場の中手の一部企業は近年、韓国中国企業を上回るペースで飛躍的に成長しており、その成長を可能にした戦略と様々なイノベーション、それらを可能にしたサプライヤーシステム変革の試みについて明らかにしてきた。また、韓国主要企業の大型設備投資戦略の背景についても明らかにしてきた。 以上を踏まえ、本研究では具体的な研究課題として①日本造船産業における主役交代劇の要因分析、②造船のサプライヤーシステムの構造と機能の分析、③韓国・中国造船産業の発展メカニズムと競争戦略の分析、④日韓中の造船産業の競争力比較分析の4つを掲げている。 上記の課題のうち、25年度は具体的には①主役交代劇、②造船のサプライヤーシステム、③韓国・中国の造船産業の発展メカニズム、④日韓中造船産業の造船産業の競争力比較分析に注力し、成果を論文として公開している。
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