研究課題/領域番号 |
23530499
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
芦沢 成光 玉川大学, 経営学部, 教授 (20184161)
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研究分担者 |
飯村 龍一 玉川大学, 経営学部, 教授 (80266246)
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キーワード | 中小企業 / 経営理念 / ビジョン / 持論(支配的論理) / 経営戦略 / 環境 / 価値観 / 経験 |
研究概要 |
平成24年度は、もの作り中小企業経営者の支配的論理、及び戦略についての聞き取り調査を15社実施した。15社は、関東圏に本社を置く、中小企業で、経済産業省によって『元気なモノづくり中小企業300社』2008年版、2009年版に選ばれている企業を対象としている。分析内容は、市場の環境、持論(支配的論理)、そして経営戦略の因果関係の分析である。特に中小企業経営者が形成してきた持論(支配的論理)と経営戦略との関係について、認知的意思決定論の視点から分析を行なった。中小企業経営者の意思決定を大きく左右するのが、過去の持論(支配的論理)であるとの仮説に基づき分析を行った。 その結果、中小企業経営者の聞き取り調査から明らかになったのは、企業ごとに異なるが、経営戦略の半分程度が持論をベースとしたアナロジーによる推論から考え出されていた点である。 具体的には、第1に、戦略の全てが持論に基づいて考え出されたものでなく、試行錯誤法が利用されていた。第2に、置かれた環境の変化が大きい中小企業の場合、試行錯誤法による経営戦略の策定が多い。第3に、持論は経営者の価値観、経験から形成されるがそれは多様である。 最後に、研究の課題として、以下3点が考えられる。第1に、中小企業の環境を考える際、顧客企業の市場環境を考える必要がある点。第2に、中小企業経営者が経営戦略を考え出す際に、試行錯誤法とアナロジーを利用するのかを規定する要因の分析。第3に、さらに多くの中小企業の調査、分析が必要である。 なお、研究の成果は、暫定的に玉川大学経営学部紀要19号に研究ノート「モノづくり中小企業の環境、支配的論理、そして経営戦略との因果関係」にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中小企業経営者の聞き取り調査については、予定通り実施できた。また、その研究成果をまとめることができた。しかし、まだ15社についての分析である。さらに調査を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、中小企業経営者への聞き取り調査をさらに15社程度計画している。昨年度までの調査をさらに充実させ、研究上の分析データの蓄積を行う。 分析の枠組みについて、理論的な検討も合わせて行う。支配的論理以外の意思決定法として利用される試行錯誤法が、具体的にどのような条件のもとで利用されるのか、聞き取り調査と、先行研究からさらに具体的に検討する。 言語学の視点から、蓄積データを分析し、その特徴点を明らかにする。中小企業経営者と大企業経営者との違いを言語学的な視点から明らかにすることで、支配的論理の特徴、そして経営戦略の特徴を明らかにする。 また、先行研究の成果を生かして、蓄積したデータを分析し、一定の理論的な見解を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、中小企業経営者の言語学的な分析を行なっている先行研究に付いて、資料を集める必要がある。また、中小企業の経営戦略についての先行研究の資料を集めるために研究費を利用する予定である。 平成24年度は、基礎的な仮説作りの為、理論的な検討に多くの時間を費やした。そのため、調査費の繰越が発生した。さらに中小企業経営者の聞き取り調査を15社程度行う必要がある。関東圏でも、茨城、群馬、栃木、さらに東北、中部圏といった遠隔地にある中小企業も対象として調査を行う予定である。
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