アジアのコンテンツ産業を調査して、その産業構造上の特徴を明らかにした上で、イノベーションを生み出すためのプロセスを分析することが、本研究の目的である。これまでの3年間、コンテンツとメディア産業におけるイノベーションを創出するためのネットワーク構造とそのガバナンスに関する調査と分析を行なってきた。平成26年度も、今までの研究調査を継続し、コンテンツ制作とメディアの戦略に関する新動向に関する調査と分析を行なった。26年度は、特に政府の文化政策と産業政策に重点をおき、コンテンツ産業の発展を促進するための政府の役割について考察した。 25年度はコンテンツ制作の上流部分に当たる企画に焦点を当てて調査と分析を行なった。その研究から、国や都市の文化政策がコンテンツの企画に一定の影響を及ぼしていることが明らかになった。特に2,3年ごとに開催されるアート・イベントのビエンナーレ、トリエンナーレの新企画が、アジア地域のコンテンツの発展にどのような影響を及ぼしているのか調査した。 26年度には、25年度のシンガポール・ビエンナーレの調査を踏まえ、アジアのアート・フェスティバルとコンテンツ産業の関係を調査した。釜山ビエンナーレと福岡アジア美術トリエンナーレ、横浜トリエンナーレ、台北ビエンナーレ、上海ビエンナーレ、京都国際現代芸術祭などを視察し、調査を行った。 本研究では、域内における文化関連財取引の拡大によるイノベーションシステムの共進化を分析することを、第二の目的としている。アジア各国におけるアート・フェスティバルにおいて、アーティストやクリエイター、企画を行うキュレーターやディレクターがネットワークを形成し、新たなコンテンツを創出している。この国際的イノベーションシステムとその共進化に関する研究成果の一部に関して、研究発表を行った。
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