今年度の研究は、二つを柱とした。第1は、アメリカ、ベトナムでのソーシャルビジネスに対する考え方、実態の調査であった。アメリカでは、バージニア州ノーフォークに赴き、ソーシャルビジネスの意識調査を行った。社会的課題の解決に対して、寄付を募るアメリカの「ファンドレイジング」に対して、利益を上げて運営しているソーシャルビジネスを研究した。利益を上げるソーシャルビジネスを研究する前提として、利益をあげず寄付を中心とする「ファンドレイジング」の実態について調査し、そこに属する人たちが、見も知らぬ地域で見も知らぬ人たちから寄付を募るという実態を把握できた。アメリカの寄付文化から寄付金は実際に集まる。このように、今回の調査では、ソーシャルビジネスに対して寄付を中心とする「ファンドレイジング」の方法が有力であることが分かった。ベトナムでは、カーフクエン(ソーシャルビジネスの会社)を訪問調査した。枯葉剤の影響を受けている障害者の学校を支援し、刺繍を教え、その子どもたちの経済社会への参加を後押しするとともに、その商品を販売している会社であった。ベトナム国内向けには高額になるかもしれないが、日本向けに販売するなどで経済的に成り立っていた。外国を対象としてのビジネスの成功例であった。アメリカでは寄付力、ベトナムでは海外展開力がソーシャルビジネスを成功させていることが分かった。 第2は、日本の各地および海外ではベトナムを巻き込んでのソーシャルビジネスの社会実験を行い、国内でのソーシャルビジネス可能性の検証と、その確立のための条件の探求を行った。地域の商品販売にしても、ソーシャルビジネスで致命的に足りないのは、ビジネスで行うことへの理解と、ビジネスとしての広報力の欠如であった。こうした点を克服するには、供給者、需要者への双方の経済教育の浸透であることが必要であることが研究結果として得られた。
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