研究課題/領域番号 |
23530507
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 志津子 明治大学, 経営学部, 教授 (30202013)
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キーワード | ロシア / ポーランド / 企業システム / 中小企業 / CSR / コーポレート・ガバナンス |
研究概要 |
(1)ポーランドの企業システムについて 論文「ポーランドの企業システム―2011年現地調査に基づいて―」を発表した。2011年に行った現地調査の結果をもとに、ポーランドの中小企業の現状、CSRの現状をロシアの場合と比較して次のようなことを明らかにした。ポーランドの場合は、中小企業の比率がより高い。CSRはステークホルダー資本主義の考え方に基づいており、従業員、労働組合、マスコミなどの影響力がより強い。ロシアの場合は、市場経済移行後、中小企業セクターが成長したが、その後、成長が足踏みしており、中小企業比率がより低い。また、CSRは地域社会への貢献という形で行われており、市民社会を構成する多様なステークホルダーに目を向けた結果というよりも、国家・自治体の要請にこたえようとするものである。 このような相違は次のようなポーランド企業システムの諸要因に由来すると思われる。 ①産業構造。ポーランドの産業構造はサービス業、製造業優位を特徴としており、そのことが中小企業の発展、民間セクターの優位につながっている。②また、地域統合(EU)への参加による外資の広範な浸透は明らかにCSRの発展に貢献している。③民主主義度の高さは、中小企業の発展をも、CSRの発展をも促進しているであろう。④社会主義時代にも農業が民営であったこと、小売業、手工業に私営が認められていたことは、市場経済化後の中小企業の発展に貢献しているであろう。また、社会主義時代からの労働者自主管理の伝統、とりわけ自主管理労組「連帯」の存在は、近年のCSR活動が労働分野において非常に進んだ実践例を生み出している背景となっているであろう。 (2)ロシアの企業システムについて 共著書『アジアのコーポレート・ガバナンス改革』のなかの1章として「ロシアのコーポレート・ガバナンス改革」を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体として、ほぼ予定通りに研究が進行している。ロシア、リトアニア、ポーランド、カザフスタンの企業システムについての実証的な研究と、比較経営研究とりわけ旧ソ連・東欧諸国の企業システムの比較研究についての方法的な研究とを同時並行で行っている。企業の環境、文化、制度、歴史との相互連関の中で企業システムを理解するという方法が有効であることを確認できた。 しかし、ロシアについての原稿執筆の依頼に答えているうちに、予定していたリトアニアの現地調査を行う時間的余裕がなくなってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、リトアニアとカザフスタンに焦点を当てた研究を行う。冬にリトアニアで現地調査を行う。Vitautas Magunus大学(Kaunas)アジア研究センターのZykas教授から研究支援を約束されている。平成25年度は果たせなかったが今年度は必ず実施するつもりである。リトアニアの企業システムは、市場経済への適応度が比較的高く、対外開放度が高いことを特色としている。小国であるが、多言語対応により高い競争力を有する。 カザフスタンについては、経済科学省付属経済研究所のBolat Tatibekov教授との研究交流を通じて、資料を収集、分析する。
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