研究課題/領域番号 |
23530507
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 志津子 明治大学, 経営学部, 教授 (30202013)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 企業システム / ロシア / 東欧諸国 / ポーランド / リトアニア / カザフスタン |
研究実績の概要 |
「ロシアのコーポレート・ガバナンス改革」と題する論文を発表した。そこで明らかにしたことの概要は下記のとおりである。 ロシアは市場経済化の開始から20年あまりを経たのみであり、そのことがロシアのコーポレート・ガバナンスを発展途上のものにしている。また、天然資源優位の産業構造が企業活動への国家介入をある程度、正当化している。したがって、「国家資本主義」という独特の経済システムがロシア資本主義を特徴づけるかぎり、その一構成要素であるコーポレート・ガバナンスもロシア独特の問題をはらみ続けるしかないであろう。 しかし、現在、ロシア政府は天然資源依存から脱却し、経済構造の多角化を図っており、そのためには外資導入が必須である。先進諸国から見てもロシアは、市場の大きさ、資源(天然資源、人的資源)の豊かさゆえに、魅力的な投資先である。しかし、上述のようなコーポレート・ガバナンス上の問題があり、しかもそれに変化の兆しが見られないことは、ロシアに関心を持つ外国資本にとって高い障壁となっている。上には触れなかったが、これらの問題は、実際上、企業活動への不当な政治介入、法治主義の未確立ともつながっており、外国資本のロシアへの投資を慎重にさせている(U. S. Department of State [2012])。 プーチン政権は、現状としての天然資源依存経済、国家資本主義、そしてそれらに合致した大株主保護、国家所有企業重視のコーポレート・ガバナンスを維持しつつ、徐々に経済構造の多角化、民間主導の経済、そしてそれらに合致したより透明でルールに基づいたコーポレート・ガバナンス(米国型か、あるいは欧州型か)への転換を図ろうとしているように見える。しかし、それには相当な時間がかかりそうである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロシアとポーランドの企業システムの研究はほぼ順調に進んでいるが、リトアニア、カザフスタンの研究が遅れている。両国について予定していた現地調査ができていない。現地調査ができなかった理由は、一つには本務校校務が想定外に多忙となったためである。もう一つには、ロシアで経済危機が起こったため、その分析に力を注ぐことになったためである。しかし、リトアニア、カザフスタンについても文献研究は進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年が研究最終年度であるが、研究の進捗が十分でない場合、とりまとめは補助事業期間終了後に行うこととする。 全体として文献研究は順調に進んでいる。リトアニア、カザフスタンについての現地調査も今年度に行う予定である。しかし、ロシア経済危機が継続しており、経済危機下のロシア企業についての分析も行いたい。それらを含めて「企業システムの比較分析―ロシア・東欧諸国を中心として―」というテーマで研究を取りまとめることもできそうではあるが、時間的に不足した場合は、とりまとめは補助事業期間終了後に行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
リトアニアでの経済・経営調査を予定していたが、できなかったため。その理由は、一つにはロシア経済危機の分析に注力したため、もう一つには本務校校務が想定外に多忙となり、海外出張が難しかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は予定どおりリトアニアを訪問して、現地調査を行う予定である。
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