研究課題/領域番号 |
23530508
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
並木 伸晃 立教大学, 経営学部, 教授 (70303104)
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キーワード | 不況 / 戦略的対応 |
研究概要 |
2012年度の研究目的は、2011年度と2012年度春に収集したデータ(財務データとアンケート・データ)を用いて研究論文を書き上げ、なるべく多くの学会等で発表し、フィードバックをもとに、ジャーナルへの投稿論文を書くことでした。今年度は、順調に進み、研究発表論文数5本と雑誌出版論文数、1本であった。発表論文では国内学会が1本、国際学会が4本であった。 研究論文のテーマは不況勃発直後に企業が持っていた競争力(主に差別化(Innovative)とスラック(余裕資源))の存在とその使用が、どう企業業績に影響するかを調査したものである。Atlantic City (USA)で発表した論文では、企業のInnovative競争力が不況勃発直後と半年後からの業績への影響を調べた。不況勃発直後では、影響が見られなかったが、半年後からの業績上昇には影響があった。Innovative競争力が高い企業ほど回復がはやかった。 他の研究発表では主にスラック資源に関する調査をした。不況勃発直後に企業がスラック(余裕資源)を持っている場合、不況直後の業績ダウンには関係ないが、不況勃発半年後、または、1年後からの業績回復には影響していた。ただし、不況勃発直後のスラック資源の存在はあまり関係ないが、スラックを減少させる企業の方が業績をより高く回復させる傾向が見られた。これらの関係はスラックの種類(例:現金、流動比率、Absorbed)によって少し違うことが検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調である。2012年度は計画通り、主に収集したデータを使って、論文を書き、発表した。と同時にさらにデータを収集した。財務データの収集、と企業のトップにインタビューした。発表した論文以外に2本の研究論文を書き終えている。1つの論文「The Performance Implications of Financial Slack and Its Reduction at the onset of the Great Recession: The Case of Small-Sized Japanese Electronics Companies」は米国経営関係の学会の大会で発表するつもりで投稿している。発表後は米国の経営関係のジャーナルに投稿する予定である。 もう一つの論文、「The Impact of Slack Reduction on Performance Turnaround during the Great Recession: The Case of U.S. Electronics Companies」は立教大学経営学部出版の「立教ビジネスジャーナル」誌に2013年1月に投稿した。現在、2013年の半ばに出版される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度に予定していたデータを使っての研究論文を書き上げ、発表、または、出版できた。2013年度はさらに多くの研究論文を書き上げ、学会の大会で発表またはジャーナルに投稿する予定である。また、研究成果を広く報告するためにホームページを開設する。 2011,2012年度に行った過去に行われた研究の調査や、企業トップとのインタビューから分かったことは、次の2つのことである。まずは、 (1)不況勃発後の企業の戦略的対応によって企業業績が大きく影響されることである。例えば、不況が起こったら、業績不振に陥った企業は宣伝費や研究開発費を増やすべきか、減らすべきかの選択を迫られる。多くの企業にとっては宣伝費を増やすべき、ということは2011年度に発表した論文で検証された。2013年度では、他の戦略的行動が企業業績の変化に影響するかを研究し、論文を書く予定である。 もうひとつは、(2)不況勃発後の企業業績の変化は、不況勃発直前までに企業が蓄積した競争力(例:スラック、差別化(Innovativeかマーケティング差別化)、企業経営者のSocial capital)が大きく影響することである。今年度は不況勃発後の企業が蓄積した差別化(主にInnovative)が業績に影響したことを発表論文(Atlantic City)で研究した。また、他の発表論文の殆どは、不況勃発後に企業が抱えていたスラック(余裕資源)とそのスラック削減が企業業績に与える影響を多く検証した。2013年度では、不況勃発直前までに企業が蓄積した他の競争力(主にジェネリック競争戦略、企業経営者のSocial Capital)の業績への影響を研究し、論文を書く予定である。上記2つのパターンの研究に集中する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度の予算の一部を2013年度に繰り越した理由は、まず、2013年3月での学会発表のための出張費が2013年度に繰り越されたこと。また、構築する予定だったホームページが2013年度にのびたことである。 より多くの論文を広く発表するつもりである。2011,2012年度に収集したデータの分析を実行し、論文を書く予定である。今年度中に少なくとも3,4の国際的な学会(主に欧米)の大会で発表する予定である。(書いた論文の英語校正が必要である。)また、国内での学会発表も行う予定である。さらに、論文を国内外の機関紙に投稿する予定である。 さらに、最終年度なので研究で発見したことを広く知られるようにホームページを構築、運営する予定である。日本語と英語版を作成する。 物品では、不況や統計学に関する書籍が必要である。また、消耗品では、プリンタ用のインク、DVDのメディア、スキャナー、文房具等が必要である。
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