我が国のクリエイティブ産業の国際競争力を維持・向上させるために、クリエイティブ能力の形成メカニズムを実証分析によって評価した。映像制作(特に主として実写を中心とするもの。映画やTV番組など)とアニメーションなどを中心とした業種を対象として、その制作プロセスの特徴と制作者の能力形成の過程をヒアリング、アンケート調査、エスノグラフィー、データベース分析等の手法によって量的側面と質的側面の両側から評価した。 映像制作において先進的取組を行う19社へのインタビュー結果を評価することで、先進技術の映像制作への活用に先進的な企業では、学協会に積極的に参加し、科学技術の動向を把握しつつも、現場での制作にも関与するハブ的人材が存在することが判明した。この状況は、サイエンス産業におけるコア研究者の議論と類似していると考えられる。 また、映像制作者に対する質問票調査の結果、産業構造が急速に変化する中、将来の業界の姿とその中で自らがどの様に活躍するかについて不確実性が増大し、制作者が自らのキャリアパスを描きにくい状況が推察された。その結果、技術の先取について積極的に取り組みにくい状況が生じていると考えられる。一方で、新技術を積極的に活用する人材の昇進速度は早く、制作者間で新技術の受容を通じ二極化が進んでいることが推察された。 データベースを通じた映像制作者のキャリア分析からは、国際共同制作に従事した制作者は、国内共同制作しか従事しない制作者に比べて、ソーシャルキャピタルの形成が速いことが判明した。
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